穿刺細胞診とは、甲状腺エコーで甲状腺腫瘍の位置を確認しながら、細い注射針でしこりを刺して直接細胞を吸い出し、顕微鏡で観察して良性か悪性かを判断する検査方法です。この検査は、通常大きな病院でしか行われていませんが、当院ではこの検査を行える施設です。採取した検体を、専門機関にて病理医に良性か悪性かの診断をして頂いています。そのため、最終的な結果がでるまでに通常1週間程度かかります。
首に針を刺すというと、「こわい」と感じるかもしれませんが、痛みはほとんどなく、数分程度で済みます。しこりが良性であるか悪性(がん)であるかを判定する標準的な方法です。
甲状腺腫瘍が良性か悪性かの判断は、CT、MRI、エコーなどの検査だけでは判別が難しいです。そのために、甲状腺エコー下穿刺細胞診が必要になります。
悪性腫瘍のうち最も頻度の高いものは甲状腺乳頭がんで、甲状腺エコーと穿刺細胞診により高い確率で診断することができます。手術による甲状腺の切除が治療の基本となりますが、乳頭がんで1cm以下の場合は条件が良ければ手術せずに経過をみる場合もあります。また、悪性リンパ腫は切除、放射線治療、抗がん剤治療を組み合わせて治療を行います。その他の甲状腺悪性腫瘍は手術による治療が基本です。
甲状腺穿刺細胞診は、甲状腺がんの確定診断には最も有力な方法です。ただし、確定診断されない甲状腺癌の種類もあります。
通常は行いません。
使用する注射針は通常の採血に使用する針よりも細いものであり、採血時と同等かそれ以下の疼痛であるためです。
ただし、病変によっては使用する針が太くなることがあり、その場合は局所麻酔薬を使用することがあります。
非常に細い針で検査を行うため合併症の頻度は非常に低いものの、考え得るものとして下記のことが挙げられます。
出血がひどい場合は入院や手術になることがあります。
血圧低下が著明な場合は昇圧剤を使用することがあります。
感染が起こった場合は抗生物質を使用することがあります。
甲状腺のしこりが悪性(がん)であることが判明した場合、組織を検査してがんの種類を判別し、画像検査でがんの広がりを調べて治療方針が決定されます。
この検査で悪性と診断されたか、あるいは悪性の疑いがある場合には、手術の可能な病院をご紹介させて頂いています。
甲状腺がんの診断は、病理診断や画像診断を組み合わせて行われますが、その前に甲状腺の状態を詳しく知るために血液中の甲状腺ホルモンや腫瘍マーカーを調べます(表)。
また、これらの値は甲状腺をすべて摘出した後の経過観察において、再発の有無を調べるために有用な場合があります。
表:甲状腺疾患における血液検査項目