貧血になる原因として、「鉄欠乏性貧血」と同程度に多いのが「亜鉛欠乏性貧血」です。
亜鉛が不足すると、赤血球の膜が脆く壊れやすくなり、また味覚の鈍化、肌荒れなどの症状があらわれます。
亜鉛の必要摂取量は、妊婦さんや授乳期の女性で異なりますが、概ね、一日当たりに必要となる亜鉛の摂取量は以下のとおりです。
必要量(mg) | 摂取量(mg) | |
---|---|---|
一般女性 | 9.0 | 6.0 |
妊婦 | 13.0 | 6.0 |
授乳婦 | 12.0 | 6.0 |
上記をみていただくと分かるとおり、女性であれば1日当たり3~6mg程度の亜鉛が不足しています。
また、亜鉛不足の人であれば1日に30mgの亜鉛が必要であると言うデータもあります。
そのため、貧血対策としては通常の食事に加えて、1日あたり10mg程度の亜鉛を摂ることが必要だと思います。
そこで、鉄分の摂取と同様に亜鉛についても、食事とサプリメントの併用で摂取する方法を紹介します。
食物での亜鉛の摂取量は以下のとおりです。
※亜鉛の含有量は100gあたりの量です。
食品名 | 亜鉛含有量 | |
---|---|---|
肉類 | 豚レバー | 6.9mg |
牛もも | 4.0mg | |
牛レバー | 3.8mg | |
鶏レバー | 3.3mg | |
魚類 | 牡蠣 | 13.2mg |
ほや | 5.3mg | |
カニ(水煮) | 4.6mg | |
はまぐり | 4.2mg |
以上のとおりとなりますが、100gあたりで亜鉛を10mg以上含むのは「牡蠣」のみです。
ただ、牡蠣を100g食べるのは財布の面からも、味的な面からも結構厳しいと思います。
そのため、鉄分補給の際と同様に、食事の際はできるだけ上記の肉や魚を摂り、あとは、サプリメントで補うようにするのが良いと思います。
1996年、西山らは、女子長距離ランナーの貧血が鉄剤の投与のみでは改善されず亜鉛の併用投与により改善することを報告した。
亜鉛欠乏性貧血として知られるようになったが、その原因は多量の発汗による亜鉛喪失にある。
亜鉛欠乏では、ソマトメジンや亜鉛由来の男性ホルモンなどの造血ホルモンの低下によって貧血が惹起される。
重症型では早期に亜鉛治療を開始しないと性腺機能低下をきたし競技の継続が困難になる。
鉄100mgに加えて亜鉛35~40mgを投与することが必要である。
同様の亜鉛欠乏性貧血は重症心身障害児や未熟児の貧血でもみられる。
慢性の炎症性疾患に伴う貧血で高フェリチン血症を呈する場合には亜鉛欠乏性貧血を疑わねばなりません。
もともと女性は月経があるため貧血になりやすいです。そして、妊婦さんは更に貧血になりやすいと言われます。もちろんそれにも理由があります。女性は妊娠をすると、胎盤を通しておなかの赤ちゃんに栄養を送ります。赤ちゃんの成長には、鉄、亜鉛、銅といったミネラル(鉱物)が不可欠です。そして、そうしたミネラル等は母体から優先的に赤ちゃんに送られます。
そのため、妊婦さんはこれらのミネラルが不足し、貧血になりやすくなってしまいます。
妊娠中の女性では、
必要となります。
妊婦さんは鉄分が不足することはもちろんですが、妊娠が進むと赤ちゃんに送られる亜鉛の量が増えるため、相対的に妊婦さんの亜鉛摂取量が減少します。
ある学術報告では、妊娠が進むほど、妊婦さんの血清亜鉛値の低下が報告されています。
そのため、妊婦さんに多い貧血は、亜鉛欠乏性貧血であることが多いと言われます。
若干余談ですが、妊娠すると味覚に変化があると言われます。
急に酸っぱいものが食べたくなったり、今まで好きだった食べ物が嫌いになったり。
味覚の変化は当たり前に起きることだと思われがちですが、この味覚の変化を生じさせる1つの原因として亜鉛不足が指摘されています。
産婦人科学会によると、実際に妊娠して味覚の変化があった妊婦さんは、軽い亜鉛欠乏状態であるということです。