慢性便秘は原因がはっきりしている「器質性便秘」「痙攣性便秘」及び「薬剤性便秘」と、原因がはっきりしていない「便秘型IBS(便秘型過敏性腸症候群)」及び「機能性便秘」にわけられます。
ここで、従来の下剤とは異なる作用機序を持つ、慢性便秘症に効く新しい薬を解説します。リンゼスと、アミティーザです。
リンゼスは腸管内の水分量を増やしたり、腸管の動きを活性化する事で便秘を改善させるお薬です。メリットとしては、体内にほとんど吸収されないため安全性に優れ、また便秘に伴う腹部症状(腹痛など)も和らげる作用を持ちます。
リンゼスは、従来の下剤では十分な効果が得られなかった方にも効きます。
リンゼスは、腸管の表面にあるグアニル酸シクラーゼC受容体という部位にくっつく事で腸管の水分を増やしたり、腸管の動きを活性化させてくれます。
リンゼスの長所は、安全性に優れる点です。身体にほとんど吸収されないため、酸化マグネシウムと異なり体内に吸収されて副作用を起こす事もほぼありませんし、大腸刺激性下剤のように耐性が生じる事もありません。
更にリンゼスは、単に便秘を改善するだけでなく、便秘に伴って生じる腹部症状(腹痛や腹部不快感など)をも和らげてくれるという利点もあります。
一方、アミティーザは腸内の水分分泌を促進して便を柔らかくするタイプの薬で、従来の水分を増やす薬が大腸に働きかけるのに対して小腸に働きかけるので、薬を飲んでも下痢にならず自然な排便を促してくれます。そのため慢性的な便秘になり、水分不足で便が固くなってしまう場合に効果的です。
アミティーザの飲み方としては、1回分1錠で1日2回を目安に食後に飲みます。慢性的な便秘の解消に効果を発揮する薬なので、便がおなかにたまって不快感がひどくなった時に飲むのではなく、定期的に飲むことを推奨されている薬です。
また、食前に飲んでしまうと吐き気などの副作用が出てくる可能性が高くなるので、正しい方法で服用しましょう。用法を守って毎食後に飲むことで定期的なお通じが期待できます。下剤を多く利用していて慢性化により効能が薄れてしまった方や、従来の薬ではあまり効果が出なかった方に最適です。
アミティーザを服用してはいけない人は、妊娠中または妊娠している可能性がある人、腫瘍やヘルニアなどにかかっていて、腸閉塞になっているまたはその疑いがある人、薬の成分に対してアナフィラキシーなどの過敏症の症状が発生する人です。
また、ガンによる麻薬(オピオイド)使用による頑固な便秘に効く新しい便秘薬が開発されました。
グーフィスは、従来の便秘薬と何が違うのでしょうか?
回腸末端部の上皮細胞に発現している胆汁酸トランスポーター(IBAT)を阻害し、胆汁酸の再吸収を抑制することで、大腸管腔内に流入する胆汁酸の量を増加させます。(通常胆汁酸は小腸で95%近く再吸収されてしまいます)
胆汁酸は、大腸管腔内に水分を分泌させ、さらに消化管運動を促進させる為に、本剤の便秘治療効果が発現するのです。
胆汁酸増加→浸透圧上昇→腸管へ水分移行
(持田製薬 グーフィス錠の薬効薬理より引用)
更に詳しく見ると、大腸に移行した胆汁酸がTGR5という受容体に結合することで、cAMP産生、Na分泌、水分分泌が促進する。また、TGR5に胆汁酸が結合すると5-HTが腸壁に放出され、5-HTによりIPANという内在神経活性化、運動ニューロン活性化が起こり、最終的にAch分泌、NO分泌により蠕動運動が亢進します。
(持田製薬 グーフィス錠の薬効薬理より引用)
まとめますと、「グーフィス」の投与により胆汁酸の大腸への流入が増加することにより、次の2つの効果があるとされています。
① 大腸内の水分分泌を促進
② 消化管運動の促進
この2つの作用を、「デュアルアクション」と呼んでいます。
つまり「グーフィス」は、便を柔らかくする、腸の動きを良くするという、「デュアルアクション」により便秘を改善します。
モルヒネ塩酸塩(アンペック他)、オキシコドン塩酸塩(オキシコンチン他)、フェンタニルクエン酸塩(フェンタニル他)などのオピオイドは、ガン疼痛の管理に用いられており、中枢のμオピオイド受容体を介して鎮痛作用を発揮します。しかし一方、消化管に存在する末梢のμオピオイド受容体を介して消化管運動および消化管神経活動を抑制することで、いわゆるオピオイド誘発性便秘症(OIC)が高頻度に発現してしまう問題がありました。
末梢性μオピオイド受容体拮抗薬は、消化管のオピオイド受容体に結合し、オピオイド鎮痛薬に拮抗することによりOIC(オピオイド誘発性便秘症)を改善します。末梢性μオピオイド受容体拮抗薬は、中枢におけるオピオイド鎮痛薬の作用を阻害しにくいようにデザインされたOICです。
OICの定義は、オピオイド治療開始時、排便の習慣やパターンに変化(排便頻度の低下、いきみを伴うようになる、残便感、排便習慣に苦痛を感じる)が現れること。
その他の従来の下剤も解説しておきます。
腸管内で吸収されにくいため、腸内に留まり浸透圧を上げることで水分を吸引し、緩下作用を示す。多量の水分とともに服用がベストです。習慣性がなく長期間の投与も可能です。
塩類下剤と同様の機序に加えて、腸内細菌が薬剤を分解して生成する有機酸による蠕動運動刺激作用も併せ持ちます。
水分を吸収しつつ便に浸透することにより、腸の内容物を膨張させ、大腸を刺激し排便を促します。
便の表面張力を下げることで水分吸収を容易にし、軟化・湿潤させて排便を促す。ビーマスには、大腸を刺激し、蠕動運動を亢進する成分も配合されています。
大腸粘膜を刺激することで排便を促す。効果発現までに通常6~8時間かかるため、朝の排便を期待する場合は就寝間への服用が良い。連用にて大腸黒皮症をきたします。
痙攣性便秘のみに使用します。
ここからは、薬以外の慢性便秘症の予防法を解説しておきます。
食物繊維を多く含む食品の例
・野菜類(キャベツ、大根など)
・果物(りんご、みかん)
・イモ類
・海藻類
・こんにゃく
・アロエ
・プルーン
・穀類
・豆類
・ごぼう
運動不足は、便秘の大きな原因になります。特に、腹筋や骨盤底筋群を中心とした下腹部の筋肉が弱まると排便が困難になります。目安として1日に10~15分ぐらいの簡単な運動を行いましょう。
便を押し出すときに腹筋の力が必要です。腹筋運動は腹部の血行を促進して胃腸の働きを高めてくれます。
腹部のマッサージや温めは腸を刺激し、排便を促す効果があります。