目次
■AGEとは?
■生体内でもおこるアミノカルボニル反応(メイラード反応)
■食事摂取とAGE
■AGEの検査方法
■AGEを避ける生活とは
■まとめ
AGEとは、Advanced glycation end products(終末糖化産物)と呼ばれる物質で、代謝過程の最後で生じる、糖化した化合物です。化学的には、アミノカルボニル反応(メイラード反応)という、アミノ基をもつ化合物(タンパク質、アミノ酸など)とカルボニル基をもつ化合物(糖など)が非酵素的に縮合反応を起こす際に生成される物質のうちのひとつです。
分かりやすく言えば、肉を焼いておいしそうなきつね色になるときに起こる反応がアミノカルボニル反応(メイラード反応)です。似たような現象としてカラメル反応というものがあります。プリンにかけるカラメルソースや、キャラメルでおなじみの現象です。このカラメル反応は糖による反応でこげ茶色への変化が起こりますが、アミノカルボニル反応(メイラード反応)では、糖に加えてタンパク質が必要だという点が異なります。
AGEにも具体的にはいくつかの物質があり、例えばpyrraline、methlglyoxal-lysine dimers、pentosidine、carboxymethyllysineなどといった物質が報告されています。
このアミノカルボニル反応(メイラード反応)は、生体内でも起こることが知られています。すると当然、AGEも産生され、さらにこのAGEが活性酸素を生じ、老化や糖尿病をはじめとしたさまざまな疾患と関連していることが分かってきました。
AGEが増加すると、体内のさまざまな組織・細胞に影響を与え、さまざまな病気(糖尿病・動脈硬化・アルツハイマー病・心疾患・呼吸器疾患・脳卒中など)の危険性が高まります。
たとえば糖尿病においては、血液中に過剰に存在する糖と、血管壁や血中を遊離しているタンパク質のアミノ基の間でアミノカルボニル反応(メイラード反応)が起こり、AGE・活性酸素が発生し、血管壁を障害することが動脈硬化の進行において大きな役割を果たしていることが分かっています。
さらに、アルツハイマー病において、アミロイドβタンパク(Aβ)が蓄積した周囲にAGEが存在していることも報告されることなどから、アルツハイマー病の進行と関連している可能性が指摘されています。また、慢性気管支炎などの呼吸器疾患に関わっているという報告もあります。
AGEは体内でも発生するほか、食べ物にも含まれますので、食事からの摂取量も考えなければなりません。糖尿病患者の食事においてAGE制限を行うと、体内のAGEレベルが著しく低下するという報告(Uribarri J et al. Diabetes Care, 34, 1610-1616)や、概ねAGE摂取量の6-10%程度が体内に保持されるという報告(Koschinsky et al. Proc Natl Acad Sci, 94, 6474-6479. Ottum & Mistry et al. J Clin Biochem Nutr, 57, 1-12)があります。
では、どのような物質を摂取することでAGEが増加するのでしょうか。まず、タンパク質が糖と一緒に加熱されることによってAGEが作られます。たとえば、先に挙げたキャラメルは当然AGE物質ですし、ホットケーキもAGEを多く含みます。キャラメルは牛乳の蛋白質が砂糖と一緒に加熱され糖化したもので、ホットケーキは小麦粉と牛乳を混ぜて焼いているためAGEが多く含まれるというわけです。他にも、たれをつけて焼いた肉や、焼き鳥、から揚げなどにも多く含まれます。
AGEを測定する方法としては、一部のAGEが有する蛍光性を利用して、蛍光性を測定する方法がこれまで多く用いられていました。この手法はとても簡単であるため研究においてよく用いられてきましたが、生体の中ではAGE以外にも蛍光性をもった物質が多く存在するため、正確性に乏しいのが難点でした。
その後、抗AGE抗体を用いた免疫化学的な測定法が広く行われるようになりました。この方法は簡便であり、かつ多様なAGEを測定することが可能であることから重宝されていますが、多数のAGEを同時に網羅的に測定することは困難であることや、抗体が他の物質と交差反応してしまい偽陽性を生じることがある、という限界がありました。
さらに、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)が登場し、多くのAGEを同時に測定できるようになり、現在研究の世界では広く用いられています。
※LC-MS/MSは高価な機器が必要でありコストも高いことから、臨床の現場で用いられることはあまり多くありません。
AGEがさまざまな疾患と関連していることが分かってきていますが、一体どのような生活を送ればAGEを蓄積させないことができるのでしょうか。下記にポイントを列記します。
炭水化物とはすなわち糖分です。もちろん体の働き(特に脳の働き)には重要な栄養源であり、完全に制限することは難しいですが、継続的に摂り過ぎれば、糖が体内に蓄積し、インスリンの分泌が追いつかなくなった段階で高血糖状態に陥ります。そして、血糖値が高いと、AGEの産生量が増えることにつながります。炭水化物の摂取はほどほどにすることが大切です。
AGEは血糖値が高いと産生量が増加します。食事によって外から炭水化物(糖)やAGEを摂取しないことに加えて、体内での産生量に気を付けることも大切です。高血圧・糖尿病・高脂血症などの生活習慣病は、複合的に絡み合っており、ひとつだけを改善しようと思っても困難です。肥満があればインスリン抵抗性が上昇しますので、少量の炭水化物でも血糖値を抑え込むことができなくなり、血糖値は上昇しやすくなります。血糖値を下げ、AGEを減らすためには、食事に気を付け、適度な運動を行い、体重を適正レベルまで落とすことで、メタボリックシンドロームを全般的に改善しようとすることが大切です。
特に、揚げ物・焼き物・とんかつ・ステーキ・焼き鳥・フライドポテトなどの、炭水化物やタンパク質を多く含み、かつ熱が加わっているような食品にはAGEが多く含まれます。
ちなみに、AGEが少ない物質としては、お刺身などの生ものや、生野菜などが代表的です。ただし、お刺身をたくさん食べればAGEが減らせるわけではありませんし、無理に生野菜をとるよりも温野菜の方が食べやすく全般的な健康維持には有用な場合が多いでしょう。
たばこの煙にはAGEが多く含まれています。直接たばこを吸わないことが何より大切である上、副流煙にもAGEが含まれているため、たばこの煙を吸わないこともAGEの蓄積を防ぐことにおいて重要です。
AGEが蓄積することで、血管が傷み、動脈硬化が進むことで糖尿病性末梢血管障害をはじめとしたさまざまな病気が進行します。AGEは動脈硬化以外にも、アルツハイマー病の進行や、肺の炎症にも大きく関与しています。さらに、活性酸素とも密接に関与していることもあり、老化そのものとも深く関わっていると考えられています。
AGEを減らす方法としては、血糖値を必要以上に上昇させないようにすること、AGEの摂取量を減らすことが大切です。そのためには、炭水化物(糖)の摂取を控えめにし、食事制限・運動・体重コントロールによってメタボリックシンドロームを改善することで血糖値が上昇しにくい体を目指し、AGEを多く含む食事やたばこの煙などを避けるように心がけるようにすることがお勧めです。