当院では、内服薬によるC型慢性肝炎、B型肝炎治療を積極的に実施しています。
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C型肝炎は経口薬(飲み薬)で治る時代になりました。直接作用型抗ウイルス剤(DAAs: direct acting antivirals)と呼ばれる経口薬が開発され、インターフェロンを用いない治療法(IFNフリー治療法)が可能になりました。DAAs製剤を用いたIFNフリー治療法は、治療期間も短く、副作用もほとんどなく、100%近い著効率を示します。また、年齢、性別を問わず、非常に高いウイルス持続陰性化率を示し、C型肝炎は、ほぼ100%治る時代になりました。尚、DAAs製剤を用いたIFNフリー治療法に対しても、医療費の公費助成が受けられます。
IFNフリー治療法は、医療費助成が受けられます。そのため、自己負担限度額は原則、月1万円(但し、上位所得階層については月2万円)で治療が受けられます。
医療費助成のためには、C型肝炎患者医療給付事業受給者表認定に係る診断書作成が必要になります。その診断書はどこのクリニックでも書けるものではありません。資格・登録が必要であり、当院は、その診断書を作成することのできる専門医療機関に指定されています。
IFNフリー治療法では、C型肝炎ウイルスのジェノタイプの違いにより、以下のようなDAAs製剤(経口薬)を用います。
ジェノタイプ1(セログループ1)では、レジパスビル/ソホスブビル配合錠(商品名:ハーボニー配合錠)、オムビスタビル水和物・パリタプレビル水和物/リトナビル配合剤(商品名:ヴィキラックス配合錠)、ダクラタスビル塩酸塩(商品名:ダクルインザ)・アスナプレビル(商品名:スンベプラ)、あるいは、グレカプレビル・ピブレンタスビル(商品名:マヴィレット)併用療法を用います。
ジェノタイプ2(セログループ2)では、ソホスブビル(商品名:ソバルディ錠)・リバビリン(商品名:コペガス、レベトール)、あるいは、グレカプレビル・ピブレンタスビル(商品名:マヴィレット)併用療法が用いられます。
ハーボニー配合錠
ハーボニー配合錠は1日1回1錠を毎日12週間服用します。服用終了12週後のウイルス持続陰性化率(SVR12)は100%でした。ハーボニー配合錠は性差、年齢に関係なく非常に高い有効性を示しましたが、重度の腎機能障害(eGFR<30mL/分/1.73m2)又は透析を必要とする腎不全の患者さんでは禁忌となり、服用できません。また、カルバマゼピン、フェニトイン、リファンピシン、セント・ジョーンズ・ワートを服用中の患者さんも禁忌となり、服用できません。
ヴィキラックス配合錠
ヴィキラックス配合錠は1日1回2錠を毎日12週間服用します。服用終了12週後のウイルス持続陰性化率(SVR12)は86.6%でした。また、服用前にY93変異が検出されなかった患者では99.0%(301/304例)がSVR12を達成しましたが、Y93変異が検出された患者のSVR12は83.0%(39/47例)でした。従って、ヴィキラックス配合錠で治療を希望される方は、治療前のY93耐性変異検査(HCV薬剤耐性変異解析検査)が重要となります。是非、Y93耐性変異検査を受ける事をお勧めします。当院ではY93耐性変異検査を無料で行っております。
アゼルニジピン,トリアゾラム,ミダゾラム,ブロナンセリン,ピモジド,エルゴタミン酒石酸塩,ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩,エルゴメトリンマレイン酸塩,メチルエルゴメトリンマレイン酸塩,シルデナフィルクエン酸塩,タダラフィル,リバーロキサバン,バルデナフィル塩酸塩水和物,リオシグアト,シンバスタチン,アトルバスタチンカルシウム水和物,カルバマゼピン,フェニトイン,フェノバルビタール,リファンピシン,エファビレンツ,セント・ジョーンズ・ワート含有食品,エチニルエストラジオール含有製剤を服用中の患者さんは禁忌となり、服用できません。
ダクルインザ・スンベプラ併用療法
ダクルインザ・スンベプラ併用療法は、ジェノタイプ1bのC型慢性肝炎が対象となります。ダクルインザ錠(60mg)1錠を1日1回とスンベプラカプセル(100mg)1カプセルを1日2回、毎日24週間服用します。ダクルインザ・スンベプラ併用療法を終了して24週後にC型肝炎ウイルスが検出されない治癒率(SVR24)は84.7%(222例中188例)です。Y93H耐性変異陰性例では184例中168例(91.3%)がSVR24を達成しました。従って、ダクルインザ・スンベプラ併用療法においても、治療前のHCV薬剤耐性変異解析検査が重要となります。当院ではY93耐性変異検査を無料で行っております。ダクルインザ・スンベプラ併用療法を希望される方も、是非、Y93耐性変異検査をお受け下さい。
リファンピシン,リファブチン,フェニトイン,カルバマゼピン,フェノバルビタール,デキサメタゾン全身投与,アゾール系抗真菌剤(経口又は注射剤),クラリスロマイシン,エリスロマイシン,ジルチアゼム,ベラパミル塩酸塩,コビシスタットを含有する製剤,HIVプロテアーゼ阻害剤,デキサメタゾン全身投与,モダフィニル,非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(リルピビリン塩酸塩を除く),ボセンタン水和物,シクロスポリン,フレカイニド,プロパフェノン、セント・ジョーンズ・ワート含有食品を服用中の患者さんは禁忌となり、服用できません。
ソバルディ・リバビリン併用療法
ソバルディ・リバビリン併用療法では、ソバルディ錠(400mg)1日1回1錠とリバビリン(コペガス錠またはレベトールカプセル)を1日2回400mg〜1000mg、毎日12週間服用します。服用終了12週後のウイルス持続陰性化率(SVR12)は96.4%です。
中等度の腎機能障害(eGFR<50mL/分/1.73m2)、コントロールの困難な心疾患、異常ヘモグロビン症の患者さんでは禁忌となり、服用できません。また、カルバマゼピン、フェニトイン、リファンピシン、セント・ジョーンズ・ワートを服用中の患者さんも禁忌となり、服用できません。
マヴィレット配合錠(パンジェノタイプ)
マヴィレット配合錠は1日1回3錠を毎日8週間服用します。服用終了8週後のウイルス持続陰性化率(SVR8)は、ジェノタイプ1で99.1%、ジェノタイプ2で97.8%でした。
C型肝炎ウィルスには1から6型の遺伝子型(ジェノタイプ)があり、従来、C型慢性肝炎(非代償性肝硬変含む)の治療を行う際は、ウィルスのタイプを調べてから、タイプ毎に異なった方法で治療をしていました。
ジェノタイプに係らず同じ方法で治療できる、パンジェノタイプのC型肝炎治療薬、グレカプレビル・ピブレンタスビル(商品名:マヴィレット配合錠)が使用できるようになりました。治療期間も短く、従来12週以上だったのが、最短8週となり、治療効果も高い薬です。腎障害がある方も服用することが出来ます。
マヴィレットの登場により、1つの治療方法でそのほとんどがカバーされることになります。
注意点ですが、脂質異常症治療薬のアトルバスタチン(リピトール)や、抗生物質のリファンピシンとは併用できないので、内服を変更または中止する必要があります。
テグレトール、アレビアチン、ヒダントール、フェノバール、ベゲタミンといった中枢神経用薬や、ジゴシン、プラザキサ、クレストール、リバロ、メバロチン、リポバス、ローコールといった循環器・脂質異常治療薬などとの併用も、薬剤の血中濃度変化が起こるため注意が必要です。
ヴィキラックス配合錠、または、ダクルインザ・スンベプラ併用療法では、治療前にY93変異(HCV薬剤耐性変異)が検出された場合、有効性が低く、服用終了後のHCVウイルス持続陰性化率が低下します。
一方、治療前にY93変異が検出されない患者さんでの有効率は、ヴィキラックス配合錠では99.0%、ダクルインザ・スンベプラ併用療法では91.3%と著効を示します。
従って、ヴィキラックス配合錠あるいはダクルインザ・スンベプラ併用療法で治療を行う場合は、治療前にY93耐性変異検査(HCV薬剤耐性変異解析検査)を行う事が重要です。
当院では、ヴィキラックス配合錠あるいはダクルインザ・スンベプラ併用療法をもちいたIFNフリー治療を希望される患者様に対し、Y93耐性変異検査(HCV薬剤耐性変異解析検査)を無料で行っております。
当院では、HCVジェノタイプを測定してから治療法を決定します。これはC型慢性肝炎はHCVジェノタイプにより治療効果が異なるためです。
特に、ダクルインザ・スンベプラ併用療法の有効率はジェノタイプ1aではきわめて低いため、注意が必要です。
C型慢性肝炎の治療の基本は「ウイルスの排除」と「肝細胞がんの阻止」です。肝臓は沈黙の臓器と言われ、C型慢性肝炎になっても全く自覚症状はありません。逆に、自覚症状に乏しいために無治療で放置されることもあります。そのため、適切な抗ウイルス療法と正しい食習慣の実践が重要です。
抗ウイルス療法を最適に選択するためには、C型肝炎ウイルスの遺伝子型(HCVジェノタイプ)や耐性遺伝子(HCV薬剤耐性変異)の解析が必要になります。当院ではこのような検査を行ってから治療の選択を指導しています。
C型慢性肝炎では、鉄分の過剰摂取が慢性肝炎の悪化を促進することがあるため、鉄制限食についても指導を行っています。健康な一般の方はあまり神経質になる必要はありませんが、C型慢性肝炎を指摘されているなら、赤身肉や魚類の血合いを摂取するのは避けた方がいいと言えます。肝臓に良いと思われている「レバー」や「貝類」も鉄を多く含むため、食べ過ぎないように注意が必要です。
玄米は鉄の吸収を防ぐフィチン酸を含むのでお勧めです。また、鉄は汗から排泄されます。定期的に運動し、汗をかくことでも鉄を減らすことが出来ます。
当院では肝炎の治療と生活指導・食事指導、そして発がん予防のための生活指導や食事指導を積極的に行っています。
B型肝炎ウィルスに対する経口抗ウイルス剤として、ラミブジン、アデホビル、エンテカビルが次々に登場し、B型肝炎の治療は新時代を迎えました。これらの経口抗ウイルス剤(核酸アナログ製剤)は、副作用が少なく、経口投与であり、かつ、強力にB型肝炎ウィルスの増殖を抑制できるため、治療の対象、適応が大きく広がりつつあります。当院では、これら内服薬によるB型慢性肝炎治療を積極的に実施しています。
B型慢性肝炎の治療にはインターフェロンや核酸アナログ製剤(ラミブジン、アデホビル、エンテカビル、テノホビル)が用いられます。核酸アナログ製剤とはB型肝炎ウイルスの複製を抑制する経口の抗ウイルス剤です。現在、日本ではラミブジン(販売名:ゼフィックス)、アデホビル(販売名:ヘプセラ)、エンテカビル(販売名:バラクルード)の3剤が保険適用になっています。
ただし、核酸アナログ製剤は使い始めると長期に使い続けなくてはならないため、35歳未満の若年者のB型慢性肝炎の治療にはインターフェロンが第一選択として用いられます。
一方、35歳以上では核酸アナログ製剤を用いますが、日本ではエンテカビルが第一選択の薬剤として用いられています。
また、インターフェロンはジェノタイプAとBに有効性が高いため、35歳以上でもジェノタイプAあるいはBであればインターフェロン療法を行います。
インターフェロン療法としては持続型インターフェロン(ペグインターフェロン、販売名:ペガシス)を週1回48週間投与する方法と従来のインターフェロン(在宅自己注射も可能)を連日24~48週間投与する方法があります。
治療により、ALT(GPT)の正常化、HBe抗原の陰性化、HBV DNAの持続低値(一般的には4~5 Log copies/mL以下)あるいは陰性化が起これば、肝癌を発症することは非常にまれであり、こうした状態にするのが、B型慢性肝炎に対する治療目標といえます。
また、インターフェロンや核酸アナログ製剤を長期にわたって投与することは経済的にも大きな負担となるため、B型慢性肝疾患に対する公費による治療費助成度が実施されています。
費用面では、IFN療法は1本7,000~15,000円程度で週3回24週間が標準投与期間です。3割負担で月3~6万円の薬剤費がかかります。但し2008年4月から肝炎の公的補助が開始され、B型肝炎に対するIFN治療に対しても各自の収入に合わせて1、3、5万円を超える費用に関しては補助が出ることになりました。さらに、2010年4月からは自己負担の上限額が1、2万円に下げられています。ただ、この公費補助は各人1度だけ申請可能です。
核酸アナログ製剤は、種類によって異なりますが1日1~2錠内服で、1日の薬剤費が600~2,000円程度です。3割負担で月に6,000~20,000円の薬剤費がかかります。核酸アナログについても2010年4月から各自の収入に合わせて1、2万円を超える費用に関しては補助が出ることになりました。
医療費助成のためには、B型肝炎患者医療給付事業受給者表認定に係る診断書作成が必要になります。その診断書はどこのクリニックでも書けるものではありません。資格・登録が必要であり、当院は、その診断書を作成することのできる専門医療機関に指定されています。
内服薬(核酸アナログ製剤)は、直接薬の力でHBVの増殖を抑えて肝炎を沈静化させます。薬を飲んでいる間はHBVのウイルス量は低下し、肝炎は起こりません。肝硬変で常時腹水がたまっている患者さんが、核酸アナログ製剤の長期投与で肝機能が改善し腹水が消失することもしばしばあります。しかしIFNと異なり、薬を中止するとほとんどの症例で肝炎は再燃します。一旦内服を開始してから勝手に核酸アナログ製剤を自己中止しますと、時に肝炎の急性増悪を起こし、最悪の場合肝不全で死に至る場合があります。絶対に核酸アナログ製剤を自己中止してはいけません。
核酸アナログ製剤のもう一つの問題点は、薬剤耐性株(変異株)と呼ばれる核酸アナログ製剤が効かないHBVが出現することです。核酸アナログ製剤は、初期の薬剤では長期投与により3年間で半数近くの患者さんに薬剤耐性株が出現することが分かりました。耐性株が一旦出現すると肝炎のコントロールが困難で、肝炎の急性増悪により死に至る症例もありました。しかし現在は最新の核酸アナログ製剤の投与では、薬剤耐性株の出現頻度は非常に低いこと、また以前の核酸アナログ製剤で耐性株が出現した場合にはもう1種類の核酸アナログ製剤を併用すればよいことがわかり、比較的安全に核酸アナログ製剤が使用できるようになりました。但し、最新の核酸アナログ製剤を5年、10年と長期間使用した場合の安全性についてはまだ明らかにはなっておらず、今後も注意深く経過観察する必要があります。
この他にウイルス量は減少しませんが、肝炎を抑える目的で肝庇護療法を行うことがあります。治療薬は内服薬のウルソデオキシコール酸と注射薬のグリチルリチン製剤が一般的です。いずれの薬剤も軽度の肝障害に対してはある程度有効ですが、B型肝炎特有の急激な肝障害の出現時は肝庇護剤はあまり有効ではありません。
肝硬変への進展と発癌リスクに影響を与える最も重要な因子はHBV DNAの量です。HBV DNA量が多いほど肝硬変発症と発がんのリスクが高くなります。従って、B型慢性肝炎ではHBV DNAの量を下げることが最も重要です。
HBV-DNA量を測定してから治療法を決定します。これはB型慢性肝炎のHBV-DNA量により治療効果が異なるためです。
また、自然治癒の可能性を十分に考慮に入れて治療必要性、治療開始時期のタイミング、治療法の選択等を決定します。
※ B型慢性肝炎に特徴的な点として、自然緩解例があるということがあります。すなわち、肝炎を起こしたあとにHBVが排除され、肝機能が安定し、無症候性キャリアーに移行する場合があるということです。このようなことは35歳までにしばしばおこります。従って、以上のような可能性も十分に考慮に入れて治療の必要性、治療開始時期のタイミング、治療法の選択等を決定する必要があります。
肝臓は沈黙の臓器と言われ、B型慢性肝炎になっても全く自覚症状はありません。逆に、自覚症状に乏しいために無治療で放置されることもあります。B型慢性肝炎の治療の目的で最も重要なこと肝細胞がんの予防です。
当院では肝炎に対する生活指導や食事指導、そして発がん予防のための生活指導や食事指導を積極的に行っています。
慢性B型肝炎患者の人に持続感染しているHBV(HBウィルス)は基本的に完全排除することは出来ません。慢性C型肝炎のHCV(HCウィルス)に対するIFN(インターフェロン)療法では何割かの人にウイルスの完全排除が期待できますが、HBVに対してはIFNを用いても、後述の核酸アナログ製剤を用いてもウイルスの完全排除は期待できません。これがHBVに対する治療とHCVに対する治療の根本的な違いです。これをふまえてB型慢性肝炎の治療をしなければなりません。