週1回の注射薬チルゼパチド(マンジャロⓇ)(GIP/GLP-1受容体作動薬)で糖尿病治療革命が起きる?
糖尿病は肥満(内臓脂肪の蓄積)が主な原因であり、食事療法や運動療法で体重をわずか1-2%でも減量できれば確実に血糖コントロールは良くなるとされています。
つまり、減量するのは大変だがわずか1-2%でも減量できれば糖尿病は確実に良くなるということです。
その中で、体重はなかなか減らないので、今まで簡単に減量できる薬がないかと多くの方が待ち望んでいました。
この度、令和5年4/18にGIP/GLP-1受容体作動薬という減量効果、糖尿病改善効果が抜群な糖尿病治療薬が発売されることが決まりました。
具体的には、体重が10kg近く減る、HbA1cが2-3%近くも低下するという画期的な効果が報告されています。
体重を10kg減らすというの至難の業であり、それが食事療法・運動療法も無しに週1回注射を打つだけで減量できると言ったら、ストイックに糖尿病治療をしなくてもよい時代が来るかもしれません。
ずぼらでも糖尿病が確実に良くなる時代が来ると言う訳です。
しかし、多くの方は注射というと怖がりそんなの出来ないと思われがちですが、今の糖尿病の注射薬は従来の注射薬と全く違います。
針が見えないし、針が細く痛みもほとんどない、かつ、お腹に押し当てるだけの子供でもできる簡単なやり方です。
従来にも体重が減る糖尿病薬GLP-1受容体作動薬として、デュラグルチド(トルリシティⓇ)やセマグルチド(オゼンピックⓇ)があり、体重減少効果、糖尿病改善効果が示されており、糖尿病専門家の間ではよく使われているお薬でした。
しかし、チルゼパチド(マンジャロⓇ)はその効果を遥かに上回る劇的な減量効果、糖尿病改善効果があると言われています(体重減少効果(4か月):デュラグルチド0.5kg減、チルゼパチド5-10kg減; 糖尿病改善効果(HbA1c, 4か月):デュラグルチド1.3%減、チルゼパチド2.3~2.8%減)。
つまり、今までの中で最強のGLP-1作動薬なんです。
10kgも体重が減ったらやばくないですか?糖尿病改善効果も2-3倍高いんです。
今まで、高血圧や高脂血症の薬は、食事療法や運動療法をそれ程しなくても薬を飲むだけで確実に血圧やコレステロールが低下する薬が使われて大変便利なんです。
しかし、糖尿病の薬だけはそうではありませんでした。
薬を飲んだり注射しただけではよくならず食事療法や運動療法をやらなければ効果が薄れてしまう、だから、ずぼらな人には糖尿病治療は難しかったんです。
しかし、チルゼパチドの登場でずぼらな人も週1回注射するだけ(自分で注射するのが難しければ週1回クリニックで打ちます)で、食事療法や運動療法をそんなに気にしなくても劇的に糖尿病が良くなってしまうそんな時代にこれからは突入してくると思います。
加えて、糖尿病の血糖が上昇する病態は、すい臓のインスリン分泌の低下とインスリン抵抗性の増大による2大要因とされていますが、その2つの病態をチルゼパチドは一度に両方改善する効果があるとされており、糖尿病の病態をまさに根本から改善させて、糖尿病コントロールの改善と減量効果の美味しいところ取りを一挙両得に叶えられる画期的な夢の薬が登場したんです。
※補足:日本ではまだ認められていませんが、海外では糖尿病の無い高度肥満者にもチルゼパチドが使われ始めています。
高度肥満者では20%の体重減、つまり、100kgの方だと注射を打つだけで20kgも体重が減るんです。
こんな強力な抗肥満薬は今までありませんでした。
今まで肥満治療として美容外科で脂肪吸引治療や、外科で胃切除などをして肥満治療をしていた方が多くありますが、これからはそんな治療は全く必要なくなるんではないかと思います。
また、週1回注射を打つだけで20kgも減量出来たら、肥満が原因の全ての病気、例えばメタボリック症候群(高血圧、高脂血症、糖尿病)などのありとあらゆる病気がこの1つの薬で解決できてしまうかもしれません。
すごい時代が来ました!
GLP-1やGIPは、インクレチンという消化管ホルモンの一種です。 食事をして、消化管内に炭水化物や脂肪が流入すると腸管から血中へと分泌され、血糖値が上昇しているときに、インスリン分泌の促進やグルカゴン分泌を抑制する因子の総称です。
現在知られているインクレチンとして、GLP-1と GIPの2種類があります。
http://www.fujimoto.or.jp/tip-medicine/lecture-187/index.phpから引用
GLP-1は主に小腸下部から分泌され、膵β細胞膜からのインスリン分泌を増加させ、膵α細胞からのグルカゴン分泌を抑制する方向に働きます。また、胃や中枢神経にも働き、胃から腸への食物の移動を遅らせる効果や、食欲を抑える効果もあります。
GIPは主に小腸上部から分泌され、膵β細胞からのインスリン分泌を促進します。この作用はGLP-1の数倍強い作用を示すとも言われています。また、インスリン感受性も高めます。その他、食欲減退や満腹感による体重増加抑制作用があります。一方で膵α細胞からのグルカゴン分泌を促進させます。
チルゼパチドは、GIP/GLP-1受容体に対する作動薬で、特にGIPに対する作用が強いとされています。また、DPP-4による分解を受けにくいため、長時間血中で作用すると考えられています。
新薬情報オンラインから引用(https://passmed.co.jp/di/archives/18181)
チルゼパチドが全身のGIP/GLP-1受容体に作用することで、上表のような全身の臓器に対しての効果が期待されます。
⇒インスリンの分泌促進・感受性更新による血糖降下作用
⇒食欲減退や満腹感による体重増加抑制作用
週1回2.5mgから開始し、4週間投与した後、週1回5mgに増量
週1回5mgを維持用量とし、皮下注射
効果不十分な場合は、4週間以上の間隔で2.5mgずつ増量可能、最大用量は15mgまで
従来のGLP-1受容体作動薬と類似しています。
5%以上の頻度;悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、消化不良、食欲減退
重大な副作用;低血糖(頻度不明)、急性膵炎(0.1%未満)
主な副作用は食欲低下で,約半数に認められたとのことです。こちらは副作用でもあり体重減量につながる効果でもありますが、安全性についてはより長い目でしっかりと見極める必要があります。