片頭痛の新しい治療薬「ラスミタジン(レイボー®)」が令和4年6/8に発売となります。昨年発売されたエムガルティ、アイモビーグ、アジョビなどの予防薬と違い、頭痛発作時(痛い時)に服用する内服薬です。ラスミタジンは血管収縮作用がないため、脳梗塞や心筋梗塞などの既往がある方でも使用可能です。また、副作用はトリプタンよりも少ないと報告されており、トリプタンが使えなかった方にも期待できそうです。アメリカではすでに2019年から使用されており、これまでの治療薬と比べると「頭痛消失率が高い」、「頭痛が再発しない」、「即効性がある」と報告されています。ラスミタジンは今までの薬とは違う、新しいタイプの急性期治療薬で、片頭痛発作に対する効果が期待されています。
薬価は570.90円と従来のトリプタン製剤とほぼ同じです。
ラスミタジンは三叉神経終末のセロトニン1F受容体に選択的に結合するジタン系薬剤です。ラスミタジンは、血液―脳関門通過性を有し、中枢では片頭痛疼痛シグナル伝達の抑制するほか、末梢では三叉神経からの神経原生炎症や疼痛伝達に関わる神経伝達物質(CGRPやグルタミン酸など)の放出を抑制することで、片頭痛発作に対する作用を示すと考えられています。 ラットでは投与15分後までに血液―脳関門を通過しており、早期の効果が期待できることが特徴です。
なお、冠動脈等の収縮作用はなく、幅広い患者さんに服用いただくことが可能です。
ラスミタジンは、様々な種類の頭痛の中でも片頭痛だけに効く、片頭痛専用のお薬です。 片頭痛発作時のみに使用し、予防的には使用しないようにしてください。
服用するタイミングには影響されにくいお薬ですが、片頭痛発作が起き始めたら、我慢せず早めに服用しましょう。
この薬を服用した後に一旦痛みがなくなり、もし再び片頭痛による痛みが戻ってきた場合には、再度この薬を服用することができます。
その場合は24時間で合計200mgを超えないようにしてください。
※ 痛みがおさまらなかった場合に追加で服用したとき、効果は認められていません。
※ 追加で服用した場合の副作用の発現割合は一回服用時に比べて増加は認められませんでした。
このお薬はめまい感や眠気があらわれることがあります。
このお薬でのめまい感や眠気は、お薬を服用してから1時間以内にあらわれることが多く、およそ数時間でおさまると報告されており、またはじめての服用時に最もあらわれやすいとされています。
このお薬では一回の服用量が多いときに、これらの症状があらわれやすくなることが報告されてています。
めまい感や眠気は、お薬とは関係なく片頭痛によっておこることもあります。
なお、めまい感や眠気を感じることがあるため、ラスミタジン服用後は自動車の運転などを避けてください。
海外で行われた「SAMURAI試験」と「SPARTAN試験」では、月に3〜8回の片頭痛発作を伴う18歳以上の患者さん(MIDASスコア11以上=中等度以上)を対象に、ラスミタジンとプラセボを比較する第Ⅲ相試験です。主要評価項目は「2時間後の痛みの軽減割合」とされ、いずれのラスミタジン投与量でもプラセボと比較して有意な軽減が認められています。
片頭痛を有する日本人成人患者さん846例をプラセボ群、ラスミタジン50mg群、ラスミタジン100mg群、ラスミタジン200mg に割り付け、有効性と安全性を検討した試験です。
服用2時間後に頭痛消失、頭痛改善が認められた患者さんの割合において、ラスミタジン100mg群、200mg群とプラセボ群との間に有意差が認められました。
片頭痛発作開始から現在服用までの時間別
片頭痛発作開始1時間未満に服用した場合も、1時間以降に服用した場合も、服用2時間後に頭痛改善が認められた患者さんの割合においてラスミタジン100mg群、200mg群とプラセボ群との間に有意差が認められました。
服用後に頭痛消失、頭痛改善が認められた患者さんの割合において、ラスミタジン200mg群では服用30分後から、ラスミタジン100mg群では服用1時間後からプラセボ群との間に有意差が認められました。辛い片頭痛に早く効果が期待できる点は嬉しいです。
服用2時間後に最も煩わしい随伴症状の消失が認められた患者さんの割合において、ラスミタジン100mg群及び200mg群とプラセボ群との間に有意差が認められました。
服用24時間後の頭痛消失の持続が認められた患者さんの割合において、ラスミタジン100mg群、200mg群とプラセボ群との間に有意差が認められました。
主な副作用として浮動性めまい(36.5%)、傾眠(20.7%)、倦怠感(11.1%)、無力症(6.3%)、感覚鈍麻(4.8%)、悪心(4.8%)が報告されています。