片頭痛の新しい予防治療(月1回注射)を当院で開始しました!
片頭痛とは、若年に発症し、頭の片側を優位にズキズキとした拍動性の頭痛を特徴とします。
患者様によっては頭痛により日常生活に支障を来すことがあり、月に10回以上の頭痛発作がある場合は、薬物乱用頭痛を予防するためにも片頭痛の予防治療を行う必要があります。
頭痛薬を飲む回数が増えて、そのことで頭痛の症状が悪化・慢性化してしまっている状態で、薬剤の使用過多による頭痛です。頭痛薬を常用していると脳が痛みに過敏になり、ちょっとした刺激で強い痛みを感じるようになります。結果的に頭痛が起こる回数が増えて痛みも強くなり、症状を悪化させます。薬剤によるものということを知らずにいると、頭痛薬を飲む頻度が増えてさらに頭痛が悪化して、薬の効果もさらに薄くなります。頭痛薬を毎月10回以上飲むという場合は、薬物乱用頭痛の可能性があります。
しかし、従来の予防薬治療(プロプラノロール塩酸塩、バルプロ酸ナトリウム、ロメリジン塩酸塩など)を行っても頭痛の改善が乏しいことがよくあります。一方、既存の予防薬では安定して効果が出るまでに2~3カ月はかかり、その間に副作用が出て脱落してしまうケースが少なくありません。既存の予防薬は血液脳関門(BBB)を通過するため、眠気やめまいといった中枢神経系の副作用が起こりやすいためです。また、バルプロ酸は催奇形性の懸念があり、妊婦や妊娠の可能性にある女性への投与は禁忌であり、片頭痛患者が多い若年女性への予防療法の選択肢は限られていました。
今回、月に1回の注射による治療で、片頭痛発作予防が期待できる治療薬が使用できるようになりました。
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP)は、片頭痛発作時に三叉神経の末梢で認められる神経伝達物質で、疼痛を引き起こします。
CGRPを投与することにより、大部分の片頭痛患者さんに片頭痛発作が誘発されることが示されており、今回製造承認された薬剤(CGRP製剤)はこのCGRPの作用を阻害することにより片頭痛発作を抑制します。
CGRPをターゲットとした治療薬の機序(Nat Rev Neurol. 2018;14:338-50.)
※尚、現時点でCGRP製剤を処方できる医師は、頭痛診療に5年以上の臨床経験を有する専門医(日本頭痛学会、日本神経学会、日本脳神経外科学会の各専門医、および日本内科学会の総合内科専門医)に限定されています。当院の院長は日本内科学会の総合内科専門医であり、処方資格があります。
臨床試験のデータから、
副作用として、注射部位反応(紅斑、そう痒感、内出血、腫脹など)、注射部位疼痛が報告されています。
稀なケースとして、めまい、便秘、蕁麻疹、アナフィラキシー等が生じる可能性があります。
投与の要否の判断に当たっては、以下の1~4の全てを満たす患者様です。