鉄剤の内服ができない方に朗報!
効果的な鉄剤注射が新たに登場!
鉄欠乏性貧血は貧血の中でも最も多い疾患になります。女性は月経があるため、特に鉄欠乏性貧血になりやすいです。
鉄欠乏性貧血の基本は経口鉄剤ですが、経口剤が無効または使用できない場合、静脈内投与が検討されます。
鉄剤の内服は、5%程度の方で、吐き気、嘔吐、腹痛、食欲不振などの胃腸症状、さらに1%程度ですが、下痢や便秘などの症状が副作用として出ることがあります。
今までこのような鉄剤内服が難しい方には、鉄剤の点滴を行っていたのですが、1本の注射に20mgの鉄が含まれていて、鉄欠乏性貧血の方は週2~3回、合計で10~20回も(その人の貧血の程度で違います)、点滴や注射に通院する必要がありました。
しかし、今回新たに、1本の注射で500mgの鉄剤が点滴できる製剤(カルボキシマルトース第二鉄)が使えるようになりました。週1回の投与で1~3回で貧血が改善できる効果的な点滴が登場しました。
既存の静脈内投与の鉄剤は週に2~3回の投与が必要ですが、カルボキシマルトース第二鉄は週1回の投与で治療が行えるのもメリットです。
治療は鉄剤の経口投与が第一選択です。
主に使用される経口の鉄剤としては以下があります。
経口鉄剤で副作用(例:悪心・嘔吐、腹痛、下痢・便秘などの消化器症状)が強い場合や効果不十分な場合、もしくは緊急を要する場合に初めて静脈投与の鉄剤が選択されます。
代表的な静脈投与の鉄剤としては以下があります。
下記からは、フェインジェクト注(カルボキシマルトース第二鉄)について詳しくお話します。
本試験は月経過多による鉄欠乏性貧血患者さんを対象に、フェインジェクト(カルボキシマルトース第二鉄)静注とフェジン(一般名:含糖酸化鉄注射液)静注を比較した第Ⅲ相臨床試験です。
主要評価項目は「ベースラインからヘモグロビン値が最大となるまでの平均変化量」とされ、フェジンに対するフェインジェクトの非劣性が検討されました。
試験群 | フェインジェクト静注 | フェジン静注 |
---|---|---|
ベースラインからヘモグロビン値が 最大となるまでの平均変化量 |
3.90g/dL | 4.05g/dL |
差:-0.15(95%CI:-0.35-0.04) 非劣性が証明 |
||
何らかの有害事象 | 58.8% | 58.0% |
このように既存のフェジンに対してフェインジェクトの非劣性が示されましたので効果としては同程度ですね。
また、有害事象の発現率についても両群間で同程度でした。
製品名 | フェジン静注 | フェインジェクト静注 |
---|---|---|
一般名 | 含糖酸化鉄注射液 | カルボキシマルトース第二鉄 |
用法 | 連日投与 | 週1回 |
禁忌 | ・鉄欠乏状態にない患者 ・重篤な肝障害のある患者 ・本剤に対し過敏症の既往歴のある患者 |
・鉄欠乏状態にない患者 ・本剤に対し過敏症の既往歴のある患者 |
重大な副作用 | ショック、骨軟化症 | 過敏症 |
主な副作用として血中リン減少(20.1%)、頭痛(4.3%)などが報告されています。
通常、成人に鉄として1回あたり500mgを週1回、緩徐に静注または点滴静注します。
なお、総投与量は患者さんの血中ヘモグロビン値および体重に応じますが、上限は鉄として1500mgとされています。
体重 | ||||
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25kg以上35kg未満 | 35kg以上70kg未満 | 70kg以上 | ||
血中ヘモグロビン値 | 10.0g/dL未満 | 500mg (500mgを1回投与) |
1,500mg (1回500mgを週1回、3回投与) |
1,500mg (1回500mgを週1回、3回投与) |
10.0g/dL以上 | 1,000mg (1回500mgを週1回、2回投与) |
血中の酸素運搬を担っているのが赤血球の中に存在する「ヘモグロビン」と呼ばれる物質です。
ヘモグロビンや赤血球が不足して組織に酸素を十分に運べなくなった状態を貧血と呼んでいますが、特にヘモグロビンの構成成分である鉄不足によって引き起こされる貧血を「鉄欠乏性貧血」と呼んでいます。
一般的な貧血症状としては以下があります。
鉄欠乏性貧血に特徴的な症状としては以下がありますが、これは組織鉄が欠乏することに起因すると考えられています。
これらの症状は鉄欠乏が回復すると徐々に回復していきます。