胃炎とは、胃の粘膜に炎症が起きた状態を言います。
大まかに、急性胃炎と慢性胃炎に分けられます。
急性胃炎は、痛み止め(非ステロイド性解熱鎮痛薬)や向精神薬などの薬剤によるもの、食べすぎや飲みすぎによるもの、アルコールや喫煙によるもの、細菌、ウィルス、真菌感染によるもの、成人のピロリ菌初感染によるもの、アレルギーによるものなどがあり、原因は様々です。
以前は「上腹部の不快な症状」に対して「慢性胃炎」という病名が頻繁に用いられていました。
具体的には、上腹部痛、上腹部不快感、悪心・嘔吐、胸やけなどの症状です。
「いわゆる慢性胃炎」と呼んでいた病気です。
しかし最近は胃カメラで確認される、萎縮性胃炎や肥厚性胃炎、腸上皮化生のことを総称して、「慢性胃炎」と呼びます。
これには症状の有無は問いません。
またシドニーシステムといって、胃壁の組織検査も含めての慢性胃炎分類もあります。
「いわゆる慢性胃炎」と、今の医療者が使用する「慢性胃炎」は違うのです。
以前の「いわゆる慢性胃炎」には「症状としての胃炎」「内視鏡所見の上での胃炎」「組織学的変化としての胃炎」の3者が混ざっていました。
現在の「慢性胃炎」は「内視鏡所見の上での胃炎」「組織学的変化としての胃炎」を指すようになってきています。
慢性胃炎の中で特に問題なのが萎縮性胃炎です。
萎縮性胃炎の原因のほとんどはピロリ菌の持続的な感染によって起こされています。
ピロリ菌は、生後1年以内に胃粘膜に感染し、その後は除菌治療がされない限り感染が続くため、胃には持続的な炎症が引き起こされます。
その間、胃の粘膜が壊されたり修復したりすることが繰り返しおき、結果として胃の粘膜が徐々に薄くなっていく「萎縮」が呼引き起こされます。
萎縮性胃炎は、ピロリ菌の他に、自己免疫性胃炎やピロリ菌以外の細菌などが原因となることもあります。
萎縮性胃炎がある方は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん、悪性リンパ腫などの疾患が発症する可能性が高いため、注意が必要です。
急性胃炎の症状は、みぞおち付近の不快感や痛み、嘔吐、食欲不振、膨満感などです。
しかし、これらの症状は、胃炎だけにみられる症状ではないことから、正確な原因を調べるためには、胃カメラ検査が必要となります。
他方、萎縮性胃炎には特徴的な症状があるわけではなく、また萎縮性胃炎があるからといって、必ずしも症状がでるわけでもありません。
そのため、症状のみでは萎縮性胃炎を推定することはできませんが、なかにはピロリ菌の除菌治療で、痛みや膨満感、もたれといった症状の改善を自覚される方もいます。
萎縮性胃炎のその他の原因には、自己免疫が関与するA型胃炎と呼ばれる病態があります。
A型胃炎にも特有の症状はありませんが、ビタミンB12欠乏による貧血症状(大球性貧血)あるいは四肢末端のしびれや知覚異常などの末梢神経症状を呈することがあります。
急性胃炎の治療は、前記した様々な原因に応じた対応が必要になりますが、一般的に用いられる治療薬は、胃酸を抑える薬(H2ブロッカー、プロトンポンプインヒビター、ボノプラザン等)であり、粘膜保護剤が補助剤として使用される場合もあります。
生活上の注意点としては、ストレスを受け続けると、胃の働きをコントロールしている自律神経が乱れて胃酸が過剰に分泌されたり、正常な胃の蠕動運動に不調和を生じたりすることがあることから、それらを克服ないしは回避して解除することが必要です。
また、食べすぎ飲みすぎ、刺激物、アルコール、タバコ、香辛料、果汁、炭酸飲料などは、胃酸の分泌を促進し炎症を助長する原因になりえるため、控える必要があります。
規則正しい生活と、消化のよい食事内容で、腹八分目を心がけることが必要です。
萎縮性胃炎の治療自体は、ピロリ菌の除菌治療になります。
これは症状を伴っているかいないかに関わらず、胃がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの疾患リスクを減らす目的で行われます。
ただし、除菌後においても、胃がんのリスクは残りますので、定期的な内視鏡検診が必要です。
また、前記したとおり、内視鏡で萎縮性胃炎と診断されたからといって、必ずしも症状を伴うわけではありませんが、他方、除菌をしたからといって必ずしも現存していた症状が改善するわけでもありませんので、症状が残る場合には、胃痛、胃もたれなどの症状に対しての一般的な治療が行われます(胃痛、胃もたれの項目を参照して下さい)。