新型コロナウイルス関連のニュースを見ていると、PCR検査、抗原検査、抗体検査のようなさまざまな検査の名前を耳にする機会があるのではないでしょうか。ですが、このそれぞれの検査の意味について疑問に持たれる方もいらっしゃるでしょう。
当院では①PCR検査、②抗原検査、③抗体検査の全てを採用しています。
ここではPCR検査、抗原検査、抗体検査それぞれの検査の意味を詳しく解説していきます。
PCR検査とはウイルスの遺伝子を増幅させて検出する方法で最も精度の高い検査方法です。検査方法は鼻や咽頭をぬぐって細胞を採取して検査を行います。
PCR検査は新型コロナウイルス感染症の確定診断に用いられており、この検査で陽性判定が出た場合には新型コロナウイルスに感染しているということになります。新型コロナウイルスに感染しているかどうかを知るためのPCR検査は公費適用(患者負担無し)となっています。PCRの検査結果は出るまでに1~2日ほどかかります。PCR検査で結果が出れば新型コロナウイルスの感染は確実です。
抗原検査とはウイルスに感染した細胞が特異的に産生する抗原を検知して診断に導く検査のことを言います。PCR検査とともに、新型コロナウイルス感染症の確定診断に用いることができます。そのため新型コロナウイルス感染症と思われる症状が発症した方でも、発症2日目~9日目の間にこの検査で陰性となった場合には、その時点では新型コロナウイルス感染症ではないと言い切ることができます。抗原検査は公費適用(患者負担無し)となっています。
新型コロナウイルスの抗原検査をするキットは15分ほどと非常に最短で検査ができること、特別な検査機器を使わずに検査ができるというメリットがありますが、新型コロナウイルス感染症に無症状で感染している方がいるかどうかのスクリーン検査の用途では使うことができません。何故なら、抗原検査はPCR検査と比べより多くのウイルス量が必要とされるため、症状のない方での検査は現在のところ推奨されておりません。
尚、抗原検査はPCR検査と異なり15~30分程度で検査結果が出ますが、PCR検査に比べると若干精度が劣るとされています。抗原検査は陽性一致率が約70%、陰性一致率はほぼ100%とされているので、陽性となった場合は確定診断として十分判断材料となりえますが、陰性となった場合は完全には新型コロナウイルスに感染していないという確定は出来ないという注意点もあります。
「PCR検査と抗原検査の比較テスト」
※陽性一致率:89.23%(58/65) 陰性一致率:96.67%
抗体検査とは新型コロナウイルスに感染していたかどうかを調べる検査です。いわゆる過去の感染履歴を調べる検査といえます。
ですので、抗体検査は自費診療となっております。
一般的に、有症状者と、無症状者とに分けて考えることができる。
有症状者で新型コロナウィルス感染の診断を目的とする場合は、鼻咽頭ぬぐいを材料としてPCR検査を行うことが最も検出感度の面で優れる。
しかしながら、随時PCR検査ができる体制はほとんどなく、休日や夜間に臨床的な判断が必要な場合には、対応の遅れにつながる場合がある。
一方、抗原検査は迅速性に優れ、治療や感染制御上の対応などを早期に開始できる利点がある。
そのため、鼻咽頭ぬぐいの抗原検査を優先して行い、疑ったにもかかわらず抗原検査が陰性の場合には必要に応じてPCR検査の結果も含めて総合的に診断を行うこともできる。
唾液を材料とする場合は、ウイルス量が多い場合にはPCR検査と抗原定量検査のいずれも陽性となることが期待されるが、ウイルス量が少ない場合には陰性となる可能性に注意が必要である。
なお、唾液による検査は、発症から10日目以降では検出感度が低下するため推奨されない。
簡易キットによる抗原定性検査は、有症状者での鼻咽頭検体のみを検査材料とすべきで、陰性の場合にはPCR検査での確認の必要性を考慮する。
無症状者でより確実に新型コロナウィルス感染と診断することが求められる場合は、鼻咽頭ぬぐいが最も材料として適する。ただし、無症状者を対象に検査する場面では、比較的多くの人数を対象とすることも想定される。
そのため、唾液を検査材料とすることで検体採取面での負担が軽減できるケースがある。
注意すべき点として、無症状者では比較的ウイルス量が少ないと想定されることから、唾液と鼻咽頭検体また唾液検体でのPCR検査と抗原定量検査について結果に乖離が出る可能性があるが、現時点では十分なデータの蓄積がない。
濃厚接触者のスクリーニングなど、偽陰性を減らすことが優先される場合には、PCR検査を行うか、鼻咽頭ぬぐいでの検査が推奨される。
無症状者を対象としては簡易キットによる抗原定性検査は推奨されない。