糖尿病治療薬も週1回製剤の時代がやってきました。糖尿病治療とは、とにかくこまめに血糖値を測定し、頻回にインスリン注射を行うことが基本であるという常識の中、週に1回内服もしくは注射をするだけで血糖を調節してくれる薬が市場に現れるとは驚きです。
糖尿病治療の新しい時代の幕開けですね!
糖尿病のお薬の中で、Weekly製剤として、週1回の内服の「トレラグリプチン」と「オマリグリプチン」の2種類があります。どちらのお薬も、「DPP-4阻害薬」とよばれるタイプの薬です。
加えて、週1回の注射薬として、「エキセナチド」、「デュラグルチド」と「セマグルチド」の3種類があります。どちらのお薬も、「GLP-1受容体作動薬」とよばれるタイプの薬です。
これはGLP-1を中心としたインクレチンが、ただ血糖を下げるのではなく、グルカゴンとインスリンのバランスを調節し、血糖を“いい感じ”に調整してくれるからこそなせる業といえます。では、これらのWeekly製剤をどのように使いこなしていくべきでしょうか?
Weekly製剤には、長所と短所があるため、それを知った上で使うことが効果的です。
1週間に1回の内服、あるいは、注射するだけで済みますので、薬の管理がしやすくなります。薬の飲み忘れが多い、自覚症状がなくお薬飲むのが面倒、ご家族、ヘルパーの方が薬を管理しているなど、糖尿病治療において薬を定期的に飲みづらい方などに対して週1回の薬は適しています。また、注射剤も週1回の注射で済みますので、毎日の注射から解放され、忙しい方や高齢者でも使いやすいです。
逆に、毎日定期的にお薬を飲む習慣がある方にとっては、週1回の薬を飲み忘れてしまう場合などがあるため注意が必要です。
週1回の投与で効果が得られるということは、いったん服用/注射したら少なくとも1週間は薬剤の影響を除去できないということです。服用/注射後にシックデイとなった場合、安全性の高いインクレチン関連薬とは言え、消化器症状による脱水や、他剤併用の場合には低血糖等の危険が全くないわけではないので、シックデイルールを事前にきちんと伝えておく必要があります。
週1回製剤の使用に際して最も注意して頂きたいことは、患者様の病識が低下しやすいことです。週1回薬を服用、あるいは、注射するだけでHbA1cが低下すると、糖尿病とはたやすい病気だと認識されてしまい、治療の基本である食事・運動療法がおろそかにされる危険が生じます。薬でHbA1cが改善すればそれでよしとの判断は、医療者/患者ともに、厳に慎まなければいけません。週1回製剤という"便利な薬"の力を上手く生かしていくために、もう一度、糖尿病治療の原点に立ち返る姿勢を大切にしたいものです。
週1回のGLP-1受容体作動薬は、DPP-4阻害薬より血糖降下作用が優れています(Diabetes Obes Metab. 2014)。しかも、デュラグルチドを用いたメタ解析や(Cardiovasc Diabetol. 2016)、セマグルチドを用いた前向き検討では(N Engl J Med. 2016)、週1回のGLP-1受容体作動薬は心血管イベントを有意に抑制しています。週1回のDPP-4阻害薬とは一味違ったWeekly製剤といえます。
また一方、DPP-4は肥満に伴う悪玉アディポカインであるという報告もあり(Diabetes. 2011)、これを週1回のDPP-4阻害薬で1週間持続的に抑制することは血糖コントロールを超えた副次的なメリットを生む可能性があります。
「トレラグリプチン」や「オマリグリプチン」に分類されるDPP-4阻害薬の作用について説明します。
血糖値を下げるホルモンである「インスリン」は食事を摂ったタイミングで多く分泌されます。そして、このインスリンの分泌には、消化管で分泌される「インクレチン(GLP-1、GIP)」とよばれるホルモンが大きく関与しています。インクレチンは食事をした時に消化管から分泌され、インスリン分泌を促進し、血糖を下げる作用を持ちます。
しかし、消化管で分泌されるインクレチンは、通常、体内ですぐに分解され、効果を失います。そこで、インクレチンを分解してしまう酵素である「DPP-4」を阻害する薬が、DPP-4阻害薬です。
DPP-4を阻害することで、インクレチンの効果を持続させ、結果的に、血糖値を下げる作用があります。
DPP-4阻害薬の特徴として、血糖依存的に効果を示すことが挙げられます。
食事をしたとき(高血糖時)に、血糖値を下げる働きを持ち、空腹時など、血糖値が低いときにはインスリンの分泌を促進せずに、血糖を下げません。つまり、利点として、他の糖尿病の治療薬で問題となる「低血糖症状」を起こしにくいことがあります。
「トレラグリプチン」や「オマリグリプチン」はともに週1回のDPP-4阻害薬に分類されますが、実は、両者では少し違いもあります。
トレラグリプチンの血中での半減期は平均18.5時間ですが、血中から薬がなくなってからも、DPP-4阻害の作用が1週間持続することが特徴です。
そのため、週1回の服用で、効果を期待することができます。
一方、オマリグリプチンの血中での半減期は、平均38.9時間ととても長いのが特徴です。肝臓で代謝をほとんど受けず、腎臓で排泄されるときにほとんどが再吸収されるといったメカニズムから、効果が1週間持続します。そのため、週1回の服用で、血糖値が高いときに、血糖値を適宜下げるという効果を期待することができます。
新規の週1回GLP-1注射ページ
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