グルカゴン点鼻粉末剤は、重症低血糖患者様の新しい治療薬です。室温で持ち運びができる1回使い切りの製剤で、重症低血糖の救急処置を行うことができる新しい特攻薬です。
インスリンを含む糖尿病の薬物治療により低血糖になる可能性があります。とくにインスリン注射中の糖尿病患者では重症低血糖が起こることがあり、回復に他者の援助が必要となります。今まで、低血糖時には、ブドウ糖内服や糖分の入った飲料水などを飲ませるなどの低血糖処置が行われていますが、重症低血糖時には意識がなく、口からブドウ糖を内服させたり糖分入った飲料水を飲用させるのは、窒息や誤嚥(肺に入ってしまう事)の危険性があり、そのような処置は勧められません。
今まで、そのような意識がない重症低血糖に対して、他者によるグルカゴン注射という方法がありましたが、他者に注射するということで躊躇されることがあり、中々グルカゴン注射をうまく活用できないというのが現状でした。
一方、 グルカゴン点鼻粉末剤は鼻粘膜から吸収されるため、重症低血糖に陥り意識を失っている患者に対しても、他者が簡単に使用できるメリットがあります。また、薬剤は点鼻容器に充填されており、調製作業が不要なため緊急時に迅速に使用できます。
グルカゴン点鼻粉末剤を、万が一の時のためにお持ちいただくことで、重症低血糖のリスクを抱える成人および小児の糖尿病患者さんが、より安心して日々の生活を過ごせるようになります。患者さんの容態が急変した際に簡便かつ速やかに投与することができ、患者様およびご家族の負担やストレスを減らすことが出来ます。
グルカゴン点鼻粉末剤の有効性および安全性は、成人1型糖尿病および2型糖尿病患者72例(1型33例、2型39例)を対象とした国内第3相無作為化2剤2期クロスオーバー試験にて検証されました。
グルカゴン点鼻粉末剤3mg経鼻投与とグルカゴン注射剤1mg筋肉内投与を比較した結果、インスリン誘導による低血糖(空腹時にインスリンを投与し血漿中グルコース濃度が60mg/dL未満に低下)が、いずれの群でも30分以内に100%回復(血漿中グルコース濃度が70mg/dL以上に上昇または最低値から20mg/dL以上に上昇)し、非劣性が示されました。
また、回復までの平均時間は、それぞれ12.0分および11.0分でした。さらに、本試験における副作用発現割合は、グルカゴン点鼻粉末剤16.9%、グルカゴン注射剤12.9%であり、その忍容性が確認されました。