新規のインスリンリスプロ注とは、既存のインスリンリスプロの有効成分に添加剤を加えることで皮下からの吸収を速めたインスリン製剤です。
新規のアスパルト注も同様です。既存のインスリンアスパルト注に、ニコチン酸アミドを添加することで吸収速度を早めています。
新規のインスリンリスプロ注は、既存薬であるリスプロ注と全く同じ成分になります。
添加剤に、トレプロスチニルナトリウムとクエン酸ナトリウムを加えることで投与後初期の吸収を速め、血糖降下作用の発現をより速めた薬剤になります。
インスリン療法が適応となる糖尿病
既存薬であるリスプロ注に比べて最高濃度の50%に達する時間で13分、曝露持続時間で88分の短縮を実現した製剤です。
要するに、もともと効き目の早いリスプロ注の効き目がもっと早くなりました。
結果、健康な人のインスリン分泌により近いインスリン動態を再現することに成功しました。
通常、成人では1回2~20単位を毎食事開始時に皮下注射しますが、必要な場合は食事開始後の投与とすることもできます。ときに投与回数を増やしたり、持続型インスリン製剤と併用したりすることがあります。
投与量は、患者の症状及び検査所見に応じて適宜増減するが、持続型インスリン製剤の投与量を含めた維持量としては通常1日4~100単位である。
(「新規のインスリンリスプロ注」100単位/mLのみ)必要に応じ持続皮下注入ポンプを用いて投与できます。
新規のインスリンリスプロ注は通常、成人では1回2~20単位を毎食開始時に皮下注しますが、必要な場合は食事開始後に投与することも可能です。
皮下からの吸収が速いことで食事開始後に投与することも可能になっています。
食事開始時に投与する場合は食前2分以内、開始後に投与する場合は開始後20分以内に投与する。
試験では、インスリングラルギンまたはインスリンデグルデクとの併用下における26週時点のHbA1c値について比較し、新規のインスリンリスプロ注の従来のリスプロ注に対する非劣性が確認されました。
また、食後血糖値上昇の抑制についても、食事負荷試験の食後1時間および2時間ともに優越性が示されました。
新規のインスリンアスパルト注は、インスリンアスパルトと同じ超速効型インスリン製剤です。
アスパルトの違いは、インスリン溶液の添加物が異なるため、効果発現が 5分~10分程度早い点です。
新規のインスリンアスパルト注の投与タイミングは、アスパルトと異なり、食直前2分以内、食後20分以内とされています。
しかし、1型糖尿病の臨床研究では、超速効型インスリンは、食事開始20分前に投与した方が、食後血糖を抑え、低血糖のリスクが低減できることが報告されているため、将来的には、投与タイミングの研究が必要となるでしょう。
インスリン療法が適応となる糖尿病
新規のインスリンアスパルト注の薬価は、アスパルト注と同じです。
「参考」
新規のインスリンアスパルト注と従来のアスパルト注の違いは、投与後の作用発現(血中濃度の上昇)スピードの違いです。
下図は、新規のインスリンアスパルト注と従来のアスパルト注の投与後の血中濃度の推移を示したものです。
縦軸:インスリンアスパルト濃度
横軸:時間(分)
赤色:新規のインスリンアスパルト
青色:従来のインスリンアスパルト
D. Slattery et al. Diabet Med. 2018 より引用
新規のインスリンアスパルト注は、従来のインスリンアスパルト注より若干早く血液中に取り込まれます。
他のデータも参照すると、その差は、従来のインスリンアスパルト注より、おおよそ5分~10分程度早いと考えられます。
新規のインスリンアスパルト注は、作用発現が早いためか、投与タイミングは、食事開始2分以内、もしくは、食事開始後20分以内に投与します。
承認前の臨床試験では、成人1型糖尿病患者に対して、食事開始前0~2分前投与と、食事開始後20分に皮下投与したデータでは、低血糖などの有害事象には有意差はなく、HbA1cも有意な差は認めませんでした。
1型糖尿病患者の臨床研究では、食事の15分~20分前に従来の超速効型インスリン製剤を投与した場合に、食直前投与と比較して、食後血糖値は、約30%低下し、低血糖のリスクが減少する事が報告されています。
従来の超速効型インスリンを食後に投与した場合には、食後低血糖のリスクが上昇することが報告されています。
従来のアスパルト注から新規のアスパルト注への切り替え時の単位数
従来のアスパルト注から新規のアスパルト注に切り替える場合には、1対1の単位数で切り替えます。
新規のアスパルト注を使用する際に注意すべき人は、超速効型インスリンと同じで、糖尿病の神経障害により、胃の動きが悪くなっている人(胃不全麻痺の人)です。
胃不全麻痺の人では、食後血糖の上昇が不安定なため、低血糖のリスクが高まります。
新規のアスパルト注は、従来のアスパルト注より作用発現が、おおよそ5分~10分程度少し早くなった製剤です。
食事開始直前に従来のアスパルトを投与していた方なら、食後血糖の改善が見込めると考えます。