大腸がんの症状と治療法
大腸がんの初期症状は、がんができる場所により異なります。
また、左側結腸は便が固形化しているため、腫瘍に通り道を塞がれて腸閉塞を起こしやすいという特徴があります。腸閉塞になると、吐き気や嘔吐を伴う腹痛が起こり、排ガスが止まって排便もなくなります。
右側結腸は便が液状で詰まることがないため、よほど進行しないと腸閉塞を起こしにくいという特徴があります。また、腫瘍から出血があった場合でも、出血箇所から肛門までの距離があるため、排便時には目に見えないこともあります。そのため右側結腸のがんは、下痢や便秘、便が細くなるなどの便通異常の自覚症状もなく、腫瘍が大きくなってから病院に来られる患者さんもめずらしくありません。
ただし、腹痛の症状は左側結腸と同様に起こります。痩せ型の患者さんの場合、腹部にしこりができたと思って病院を受診される方もいます。その他、右側結腸の大腸がんは貧血の原因となります。腫瘍の表面は本来固くなっています。しかし、腸の内容液と接することで腫瘍表面がただれとなって削れ、出血が連日続きます。この出血が継続することで徐々に貧血状態が進行するため、患者さんの体は貧血であることに慣れてしまい、日常生活には支障が生じません。そのため、血液検査でヘモグロビン濃度が低いという結果が出て初めて、大腸がんの発見へと繋がるケースもあります。
大腸がんの治療方法には、大きく分けて、「内視鏡的切除」「外科手術」「化学療法(抗がん剤治療)」「分子標的薬」「免疫療法」の5つがあります。大腸がんの治療が必要な患者様には、近隣の基幹病院をご紹介させていただきます。
悪性度や進行度により検討されますが、基本的に遠隔転移が認められなければ、外科手術が第一選択になります。がんが大腸の粘膜にとどまっている早期がんの一部は、内視鏡による切除でも完治することが多く、内視鏡的切除が選択されます。早期がんでない進行がんの場合、外科手術に加えて、抗がん剤治療を併用されることが多いです。
大腸がんの術後補助化学療法で柱となる薬は、フルオロウラシル系の抗がん薬、フルオロウラシルです。通常はフルオロウラシルの作用を強める活性型葉酸製剤のホリナートカルシウムまたはレボホリナートカルシウムという薬とともに使われます。
現在、世界的に大腸がんの術後補助化学療法の標準治療となっているのは、フルオロウラシル+レボホリナートカルシウム+オキサリプラチンを組み合わせたFOLFOX療法と、カペシタビン+オキサリプラチンを組み合わせたXELOX療法の二つです。FOLFOX療法に関しては、mFOLFOX6療法(mはModified;修正の略)と呼ばれる組み合わせを用いています。
FOLFOX療法、XELOX療法のどちらを選ぶかについては、副作用や投与法などから、患者さんに合うほうを提案し、患者さんとともに検討して決定します。ただし、副作用や体調などからどうしても一種類の抗がん薬での治療を希望する場合には、フルオロウラシル単独で治療することもあります。
最近は、次の分子標的薬や免疫療法などの従来の抗がん剤に比べて副作用が少なく治療効果が期待できるものが治療応用できるようになってきました。
分子標的薬とは、がん細胞の表面にある特異的なタンパクや遺伝子を標的として効率よく攻撃できるように設計された治療薬です。ただし、残念ながら副作用は相応に発生し生活の質の低下は完全には避けられません。また、完全に治癒を目指す治療薬ではなく、延命が治療の目標である点は従来の抗がん剤治療と大きく変わりません。
大腸がんで、現在、有効性が確かめられている分子標的薬は、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブです。
KRASという癌遺伝子を検査して突然変異がなければEGFR(上皮増殖因子受容体)をターゲットした分子標的薬であるパニツスマブか、セツキシマブをmFOLFOXに併用します。
「KRAS遺伝子」を調べ、効く・効かないを判断
分子標的薬である抗EGFR抗体の特徴は、がん細胞の中にある「KRAS遺伝子」に変異(変化)がない「野生型」(正常な型)の人に対して、治療効果が期待できるという点です。KRAS遺伝子に変異がある人は「変異型」と呼ばれ、効果がありません。したがって、これらの薬を投与する前にKRAS遺伝子の状態を調べ、野生型の患者さんにのみ、使います。
免疫療法として、免疫チェックポイント阻害剤は、がん細胞による免疫細胞の阻害が起きないようにして免疫細胞が的確にがん細胞を攻撃できるようにする治療薬です。京都大学の本庶教授がノーベル賞を受賞したのはこの免疫チェックポイント阻害剤の開発の功績があったからです。ただし、この免疫チェックポイント阻害剤は間質性肺炎や重症筋無力症などの重い副作用が発生することがあり使用には細心の注意を要します。
当院では、副作用が少ない治療として、胃がんなど、手術や抗がん剤治療に手も難治に至った進行がんの症例に対し、新樹状細胞ワクチン療法と活性NK細胞療法とを併せたハイブリッド免疫療法や、がん遺伝子RNAの静止化を行うSOT(Supportive Oligonucleotide Technique)と呼ばれる治療法(アポトーシス・アンチセンス治療)、あるいは、抗がん効果をもたらす高濃度ビタミンC点滴療法を実施しております。
がん免疫療法
https://www.okochi-cl.com/original97.html
腫瘍幹細胞検査
https://www.okochi-cl.com/original159.html
高濃度ビタミンC点滴療法(抗がん効果)
https://www.okochi-cl.com/original81.html
大腸がんはがんの進行度(ステージ)によって大きく変わります。
治療による患者さんの負担は、内視鏡的大腸ポリープ切除術<EMR<ESD<HALS<開腹手術の順番に大きいです。
再発転移の可能性は逆になりますが大きな差はありません。これらの治療の合併も比較的少なく安心して受けられる治療です。
EMRは、ステージ0期で癌の大きさが2cm以下で悪性度が低く、切除しやすい場所が適応です。切除しにくい場合はHALSの場合もあります。
ESDは、ステージ1期までで悪性度が低く、切除がしやすい癌の中心に凹みがない場合に適応があります。それ以外はHALSになります。
内視鏡的大腸ポリープ切除術(ポリペクトミー)とは?
ポリープとは、大腸粘膜から飛び出したイボのような突起物であり、がんとそれ以外のものがあります。
特に大腸ポリープは大きくなると大腸がんになる可能性が高まるため、ポリープの段階で切除することが大腸がんの予防になります。
内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)は、内視鏡の先端から「スネア」という器具を使用してポリープを切除します。
当院で大腸内視鏡検査を受けられた多くの方にポリープが見つかり、約4人に1人がポリープを切除されています。
EMR(内視鏡的粘膜切除術)とは?
EMRは、ポリープ切除術では切除できない平坦な形の早期がん等に対して、粘膜下層に薬剤を注入することで病変部を盛り上げてからスネアで切除する方法です。
病変の大きさがスネアの大きさ程度(約2cm)であれば1回で切除することが可能です。
ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)とは?
ESDは、スネアではなく、特殊なナイフを使って早期がん等を切除する方法で、5cm程度までの大きな病変でもひと固まりで切除できます。粘膜下層に薬剤を注入して病変部を浮かせてから切除します。こちらは、総合病院での入院が必要となります。
HALS(用手補助下腹腔鏡手術)とは?
HALS:用手補助下腹腔鏡手術とは、内視鏡ではなく、腹腔鏡(全身麻酔で腹部にポート刺す方法)による手術です。
ステージ0期や1期で内視鏡手術で難しい場合に腹腔鏡による手術になります。
リンパ節も一緒に切除できるため、悪性度が高い、リンパ節転移の可能性がある場合はHALSが適しています。
HALS(用手補助下腹腔鏡手術)
ステージ2期は、癌が筋層から漿膜(しょうまく)に浸潤し、癌が少し大腸の外に顔を出すまで、さらにリンパ節転移がないのが条件です。
リンパ節転移がないということは、自然にがん免疫が獲得できる可能性があります。しかし、リンパ管という大腸とリンパ節の間の免疫細胞の通路が塞がれていると、癌免疫が獲得できないため再発しやすいです。
大腸は、右結腸動脈・中結腸動脈・左結腸動脈・S状結腸動脈・上直腸動脈の栄養血管があり、どの動脈を結紮(しばり切り離すこと)するかで切除範囲が決まります。
ステージ3期では、免疫細胞の交通網のリンパ管とリンパ節が癌で閉鎖されているため、がん免疫が獲得できていません。この状態では癌細胞がどんどん体の中で広がってしまいます。しかし、がんの広がりの多くは腸間膜というほとんどが脂肪の組織までしか広がっていかないため、手術切除で99%のがんが切除が可能です。
ですが、がん免疫がないために残った1%のがんが倍々に増加しやすく再発率が高いのがこのステージの特徴です。理論的には、術後の免疫療法で癌免疫が獲得できれば再発しないという状況です。
手術できる場合は、開腹手術で大腸と腸間膜とリンパ節を一緒に切除します。そして、術後に再発予防目的に抗癌剤または免疫治療の片方、もしくは両方を行います。
大腸がんの肝転移は手術切除できる場合もあります。条件は、
が判断の基準になります。
即手術できる場合
元気であること、持病がないこと、肝臓と腎臓も元気であることが肝臓の手術に耐えられる条件です。手術で癌が取り除ける条件は最大のものが5cm未満で4個まで(それ以上でも可能な場合もあります)が目安です。
肝臓の手術は、患者さんにとってかなりの負担がかかります。肝切除後に抗癌剤治療することはとてもつらく、途中で抗癌剤治療を中止することが多いのが現状です。
免疫療法では、肝臓の手術後の患者さんに抗癌剤治療はつらいものであるため、樹状細胞がんワクチンで再発予防します。
肝転移の大きさ5cm以下と、数が5個未満のステージ4期
高齢者や持病がある場合、肝臓の手術は命にかかわります。しかし、肝転移を手術できなければ長期の予後が望めませんし、弱い抗癌剤治療では長期の予後は期待できません。
そこで、肝切除できなくても樹状細胞がんワクチンで長期の予後に期待が持てます。
肝転移の大きさ5cm以下と、数が5個未満のステージ4期
肝転移が大きい場合、無理やり手術しても、残った肝臓に癌がすぐできます。そこで抗癌剤治療で肝臓の癌を小さくしてから手術に持ち込む方法をとります。
しかし、ここに大きな問題点があります。抗癌剤の治療で癌が小さくなっても、抗癌剤の副作用で肝障害が起きると肝切除ができなくなります。
大腸癌の患者さんは脂肪肝が多く、脂肪肝はイリノテカンと5FUによる副作用が多く、オキサリプラチンは類洞閉塞を起こし、手術時の出血量を増やすことがあります。現在、KRASという癌遺伝子を検査して突然変異がなければEGFR(上皮増殖因子受容体)をターゲットした分子標的薬であるパニツスマブ(ベクティベックス®)かセツキシマブ(アービタックス®)をmFOLFOX6(モディファイドフォルフォックスシックス)に併用します。
しかし、肝切除できるのは3人1人、または4人に1人程度です。
大腸癌の45%-50%にKRAS遺伝子の変異があり、その場合、肝切除できる確率は10%-20%とかなり厳しくなります。
そこで免疫療法では、mFOLOFX6と樹状細胞がんワクチンや活性化リンパ球を併用することで肝切除に持ち込みに成功しています。
大腸癌多発肝転移、最大5cm以上、5個以上
当院のがん免疫療法の詳細は下記をご覧ください。
https://www.okochi-cl.com/original97.html