糖尿病と骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の
密接な関連について
骨粗鬆症は骨の強度が低下して骨折しやすくなる病気です。
骨粗鬆症になると転んだだけで背骨や足の付け根の骨、腕の付け根の骨、手首に骨折しやすくなります。
これによって日常生活に支障をきたし、生活の質が低下します。
そして、糖尿病の方は、そうでない方と比べて骨折の危険が大きいと言われています。
糖尿病の方とそうでない方を比べた研究では、1型糖尿病の方で3~7倍、2型糖尿病の方で1.3~2.8倍も骨折しやすいということが分かっています。
骨の構造は、言わば鉄筋コンクリートの建物のような構造になっています。
建物の強さは内部にある鉄筋の構造と、それを囲むコンクリートの丈夫さで決まります。これと同じように、骨の強さ(これを骨強度といいます)は鉄筋のような働きをする骨質と、それを補強するコンクリートのような働きをする骨密度の2つで構成されます。
建物の強さ=鉄筋+コンクリート
骨強度=骨質(骨の構造や、骨を形作る材料の特性)+骨密度(カルシウムなどのミネラル)
骨質は、骨の構造が良い構造かどうか、材料に良い材質が使われているかどうかで決まります。また、骨密度はカルシウム・リン・マグネシウムなどのミネラル成分の量で決まります。骨の構造やそれに使用される材料が劣化していたり、骨密度が減って強度が低下したりすると、骨折しやすい状態、いわゆる骨粗鬆症になります。
糖尿病の方の骨折では、骨の構造を支える骨質の劣化が特徴的です。これには高血糖による酸化ストレスやインスリン抵抗性が悪影響を与えていると言われています。
また、神経障害で足底の感覚が鈍かったり、網膜症で視力が低下していたりすると転びやすくなります。高齢の方の場合は筋力が低下していることもあり(サルコペニア)転倒して骨折につながりやすくなります。
まずは、糖尿病の治療をしっかり行いましょう。カルシウムを含んだバランスの良い食事をとります。また、適度な日光浴と運動は、骨を丈夫にします。
骨粗鬆症がすすんで骨折のリスクが特に高い方の場合は、骨折を予防する骨粗鬆症治療薬を使用することもあります。
糖尿病の方も血糖コントロールを良い状態にすることで骨折を防ぐ効果があると言われます。これまでの研究では、HbA1cが7.5%以上の2型糖尿病の方では糖尿病がない方と比較して骨折リスクが1.47倍と高い一方で、HbA1cが7.5%未満の2型糖尿病の方の骨折リスクは糖尿病がない方と同程度だったという報告があります。
わずかな外からの衝撃で骨が折れることをぜい弱骨折といい、骨粗鬆症の方に特徴的です。ぜい弱骨折の場所は、椎体骨(背骨)・大腿骨近位部・下腿骨・橈骨遠位端(手首周辺)・上腕骨近位端(腕の付け根)などがあります。
上記にあてはまる方は骨粗鬆症の治療薬を開始した方が良い場合があります。
主治医と相談しましょう。
はい、骨折に影響すると言われる糖尿病薬があります。
チアゾリジン薬という薬は骨髄間質細胞の脂肪細胞への分化を促進し、骨芽細胞への分化を抑制します。これまでの研究で、特に閉経後の女性へのチアゾリジン薬使用により、骨折リスクが上昇したと報告されています。そのため、チアゾリジン薬を使用する時には骨密度や骨折の既往を確認し、骨折リスクが高い方には注意します。
現在、骨粗鬆症の治療薬が次々に登場し、個々の患者さんの症状や病気の進行度に応じて、選択肢が増えてきました。最近では、従来の治療薬よりも強力に骨密度増加が期待できる薬や、患者さんが継続しやすいように投与間隔や剤型に配慮したものもあります。
骨粗鬆症の薬は大きく3つに分類されます。
骨吸収がゆるやかになると、骨形成が追いついて新しい骨が骨の吸収された部位にきちんと埋め込まれ、骨密度の高い骨が出来上がります。 女性ホルモン製剤(エストロゲン)、ビスフォスフォネート製剤、SERM(塩酸ラロキシフェン、バゼドキシフェン酢酸塩)、カルシトニン製剤、デノスマブ
活性型ビタミンD3製剤、ビタミンK2製剤、テリパラチド(副甲状腺ホルモン)
カルシウム製剤
カルシウムは骨をつくる主要な成分であり、欠かせないミネラルです。骨粗鬆症患者さんでは食事の摂取と薬の摂取量をあわせて1000mgが望ましいとされています。
食事で摂取したカルシウムの腸管からの吸収を増す働きがあります。また、骨形成と骨吸収のバランスも調整します。骨粗鬆症治療では古くから使われている薬です。
骨密度を著しく増加させませんが、骨形成を促進する作用があり骨折の予防効果が認められています。
女性ホルモンの減少に起因した骨粗鬆症に有効です。閉経期のさまざまな更年期症状を軽くし、併せて骨粗鬆症を治療する目的で用いられます。
破骨細胞に作用し、過剰な骨吸収を抑えることで、骨密度を増やす作用があります。 経口剤、注射剤などがあります。服用の仕方として4週間に1回、1週間に1回、1日に1回などがあります。
骨に対しては、エストロゲンと似た作用で骨密度を増加させますが、骨以外の臓器(乳房や子宮など)には影響を与えません。
骨吸収を抑制する注射薬ですが、強い鎮痛作用も認められています。骨粗しょう症に伴う背中や腰の痛みに対して用いられます。
新しい骨をつくる骨芽細胞を活性化させ、骨強度を高めます。骨密度が非常に低いなど骨折リスクが高い患者さんに適した薬です。現在、1日1回患者さんが自分で注射をする皮下注射剤と、週1回医療機関で皮下注射してもらうタイプとがあります。
破骨細胞の形成や活性化に関わるたんぱく質(LANKリガンド)に作用して、骨吸収を抑制します。6ヵ月に1回の皮下注射のため、継続しやすいというメリットがあります。
骨細胞によって骨内部で産生される糖タンパク質であるスクレロスチンは、骨芽細胞による骨形成を抑制するとともに、破骨細胞による骨吸収を刺激する。この薬は、このスクレロスチンに結合して阻害することで、骨形成を促進するとともに骨吸収を抑制する。これにより、海綿骨および皮質骨の骨量が急速に増加し、骨の構造および強度が向上することで、骨折リスクが低下すると推測されている。1カ月に1回の皮下注射で、12カ月間で中止のしばりがあります。