そもそも中性脂肪高いのは、治療が必要なの?
LDLコレステロールは悪玉コレステロールといわれていることもあり、治療しなければならないという意識を持たれる方も多いです。しかしながら中性脂肪については、軽視されてしまうことが多いです。
しかし近年では、この食後の中性脂肪高値も食後高脂血症という病名がつけられ、動脈硬化につながるとして問題視されてきています。食後高脂血症の方は、中性脂肪のピークが3~4時間程度遅く出現するため、低下しづらいことが分かっています。
そのため中性脂肪が十分に下がらずに次の食事をとることで、常に中性脂肪が高い状態になるのです。この食後高脂血症の方も、動脈硬化の原因になります。
実際に非空腹時TG84mg/dLの人に比べて、TG166mg/dLと食後高脂血症の方は
といったほどに発症率が上昇すると報告されています。
中性脂肪の新しい治療薬ぺマフィブラート(パルモディア®)が登場しました。
一般的に、中性脂肪が高い場合の治療薬としては、
のどちらかが使われることが多いです。
フィブラート系はこれまで、LDLコレステロールを低下させるスタチン系との併用が禁忌とされていました。このため、LDLコレステロールと中性脂肪の両方が高い場合は、動脈硬化に直結するLDLのコントロールを優先していました。中性脂肪を下げる効果のあるEPAのお薬などを併用していました。
スタチン系とフィブラート系の併用によって横紋筋融解症という副作用が増加する可能性が指摘されていたためですが、欧米でも併用は可能となっていることを受けて、2018年10月より原則禁忌が削除されました。
実際に、高中性脂肪血症のお薬としては、
フィブラート系として、
魚の脂のお薬として、
があります。
フィブラート系のお薬は、PPARα(ペルオキシソーム増殖剤応答性レセプターα)という受容体を活性化させることで効果が認められます。
この受容体が活性化されることで、LPL(リポ蛋白リパーゼ)という中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセリンに分解する酵素です。また、血液中の遊離脂肪酸を脂肪細胞に取り込ませる働きもあります。同時にHDLコレステロールを構成するタンパク質が作られ、結果としてHDLコレステロールを増加させます。
この3つの違いをみてみましょう。
ベサフィブラートとフェノフィブラートは、どちらも同じようにPPARの活性を高めますが、サブタイプに対する作用が異なります。ベサフィブラートよりフェノフィブラートの方が中性脂肪を下げる効果は強力です。ですがベサフィブラートには、インスリン抵抗性を改善する作用が期待できます。肥満の方に向いていて、血糖コントロールにプラスに働きます。
近年発売されたぺマフィブラートはPPARの形を変えることで、従来のフィブラート系のお薬よりも選択的に中性脂肪を下げたり、HDLコレステロールを増やす遺伝子の働きを強めるお薬となっています。
このため、フェノフィブラートと同等の効果が期待できる一方で、肝臓や腎臓への負担を減らすことができるといわれています。他のフィブラート系よりもPPAAα(核内受容体のひとつ)に対する選択性が高いことが、副作用の低減に繋がっていると考えられています。
フィブラート系 | 中性脂肪を下げる効果が強いので、中性脂肪が高い患者に使用されることが多い。 善玉(HDL)コレステロールを上げる効果もあり。 |
---|---|
スタチン系 | 悪玉(LDL)コレステロールを下げる効果が強い。善玉コレステロールを上げる効果は弱い。 |
レジン系 | 悪玉コレステロールを下げる効果あり。スタチン系と併用することが多い。 |
プロブコール | 悪玉コレステロールを下げる効果あり。 |
ニコチン酸 | 善玉コレステロールを上げる効果あり。悪玉コレステロールを下げる効果は弱い。 |
小腸吸収型 | 悪玉コレステロールを下げる効果あり。スタチン系と併用することが多い。 |
PCSK9 | 悪玉コレステロールを強力に下げる。重度の患者に使用。注射剤。 |
ウォーキングや水泳などの有酸素運動を適度に続けることで、中性脂肪を減らし、善玉コレステロールを増やすことができます。
運動による肥満解消効果も重要な要素です。