腎臓でできた尿は腎盂尿管を通って膀胱に貯められます。尿がある一定以上に貯まると尿意を生じ、膀胱の筋肉が収縮することにより排尿します。過活動膀胱とは、この排尿システムの中で膀胱が敏感になり、おしっこが貯めにくい、我慢が効かない、急に膀胱が収縮して失禁をしてしまうという病気です。
切迫感を伴う頻尿が中心で、時にはトイレに間に合わなくなって漏れるようなこともあります。つまりは膀胱の排尿する活動が過剰になっており、時には排尿の自制がきかず勝手に膀胱が排尿してしまうような病態です。
水を触ると尿意が起きる、水がしたたり落ちる音だけで尿意が起きる人もいます。おしっこをしたくなるとトイレまで間に合わなく失禁してしまう人もいます。夜間頻尿を主訴とする方もいます。日中おしっこが二時間持たないという方は過活動膀胱の可能性があります。
下記が過活動膀胱の問診票です。
質問3の点数が2点以上、かつ全体の合計点が3点以上であれば、過活動膀胱が強く疑われます。
脳卒中や脳梗塞などの脳血管障害、パーキンソン病などの脳の障害、脊髄損傷や多発性硬化症などの脊髄の障害の後遺症により、脳と膀胱(尿道)の筋肉を結ぶ神経の回路に障害が起きると、「膀胱に尿が溜まったよ」「まだ出してはいけないよ」「もう出していいよ」「膀胱を緩めるよ(締めるよ)」「尿道を締めるよ(緩めるよ)」といった信号のやりとりが正常に働かなくなります。その結果、膀胱に尿が少ししか溜まっていなくても尿を出そうとしたり、「締める」「緩める」の連携がうまく働かなかったりして、過活動膀胱の症状が出るのです。
● 骨盤底筋のトラブル
女性の場合、加齢や出産によって、膀胱・子宮・尿道などを支えている骨盤底筋が弱くなったり傷んだりすることがあります。そのために排尿のメカニズムがうまく働かなくなり、過活動膀胱が起こります。
● それ以外の原因
上記以外の何らかの原因で、膀胱の神経が過敏に働いてしまう場合や、原因が特定できない場合もあります。いくつかの原因が複雑に絡み合っていると考えられています。この原因の特定できないものや加齢によるものが、実際には最も多く存在しています。
症状から診断をします。血液検査などで診断をすることはできません。CTやMRIでも診断はできません。膀胱の神経がダメージを受け、排尿ができない状態の「神経因性膀胱」と判別する為に、超音波を使って残尿測定をします。
排尿記録を付けて頂き、実際に何回トイレに行ったか、一回あたりの尿量はどのくらいかを測定することが診断に役立ちます。
過活動膀胱は、「薬による治療」が効果的です。抗コリン薬とβ3作動薬が使われます。
抗コリン薬は膀胱の異常な収縮を抑え、β3作動薬は膀胱の筋肉をゆるめることで、膀胱に尿をしっかり貯められるようになります。
膀胱の収縮を抑えて、尿意切迫感も改善する薬剤です。口渇や便秘といった副作用がしばしば見られます。また閉塞隅角緑内症の方には使用できません。
ポラキス®、バップフォー®、デトルシトール®、ベシケア®、ウリトス®、ステーブラ®、トビエース®、ネオキシテープ®(貼付剤)など。
蓄尿時の膀胱の拡張を促進する薬剤で、尿意切迫感も改善します。口渇や便秘の頻度が低いと言われています。
ベタニス®、ベオーバ®。