風邪薬を飲むと眠くなるといった経験をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。特に、働いている方にとって風邪薬を飲むと、眠気を感じないまでも、集中力や判断力を低下させるので、ミスを犯しやすく、仕事、勉強、車の運転などにも支障を起こします。
市販のかぜ薬は主に総合感冒薬で、発熱、関節痛、咳、鼻水などを抑える成分が5~6種類配合されています。そのために、ひとつの薬でいろいろな症状に対応できる半面、そのとき必要のない成分まで含まれています。また、ひとつひとつの成分の量は控えめです。
クリニックで医師は患者さんの症状や体質にあわせて薬を処方します。ひとつの薬のなかには1種類の成分しか含まれていないものが多く、何種類ももらうと「薬の数が多い」と思うかもしれませんが、実は、その人に必要な薬だけが処方されているのです。
市販の風邪薬には、くしゃみや鼻水を引き起こす物質であるヒスタミンの作用を抑えるため、抗ヒスタミン薬が配合されていることがあります。ヒスタミンの作用には、脳内物質として眠気を抑えて覚醒状態を保つ重要な役割もありますが、抗ヒスタミン薬が脳内に移行すると、この働きも抑制されてしまうために、眠気がさしたり、頭がボーッとしてしまうこともあります。
また、市販の風邪薬には、上記の抗ヒスタミン薬のほか、ブロムワレリル尿素やアリルイソプロピルアセチル尿素など催眠・鎮静成分が、鎮痛作用を高めるために配合されていることが多いですが、これら成分による眠気の防止を期待して、たいていはカフェインが加えられています。カフェインの配合はまた解熱鎮痛作用をもつ薬物の効果を増強する働きもあります。
抗ヒスタミン薬が脳に働くと眠気が出現するわけですから、脳へ移行しにくい薬が望まれるため、非鎮静性の第二世代抗ヒスタミン薬が開発されました。個人差はありますが、眠くなりにくい第二世代抗ヒスタミン薬は、薬局で市販されていることは少なく、病院やクリニックでしか処方されないものがほとんどです。
風邪薬の中に入っている成分で、鼻水や鼻詰まりに効く抗ヒスタミン剤(マレイン酸クロルフェニラミン、マレイン酸カルビノキサミンなど)は眠気を誘う副作用があり、薬局で市販されています。
眠気の起こりにくいくしゃみや鼻水を抑える薬としては、アレグラ、クラリチン、ビラノアなどがあげられ、クリニックなどの医療機関で処方される処方せんの必要な薬になります。
風邪薬で眠気が起こりやすい方や眠くなると困ってしまう方は内科の医師に相談するとよいでしょう。
眠くなりにくい風邪薬は、西洋薬だけでなく、漢方薬にもあります。風邪の引き始めに使用する「葛根湯」や、鼻かぜに使用する「小青竜湯」、胃腸の弱った風邪に使用する「柴胡桂枝湯」などの漢方薬も眠気が出にくい風邪薬といえます。
通常、抗生物質(クラリス、クラリシッド、フロモックス、メイアクト、ジェニナックなど)や解熱鎮痛剤(カロナール、ロキソニン、ブルフェンなど)や去痰剤(ムコサール、ムコソルバンなど)は眠くなりません。
最近、「パブロン50」や「ディクルDayQuil」など、抗ヒスタミン薬など眠気の出る成分を含まない風邪薬がOTC薬として販売されています。これらの薬の主成分は、熱を下げるアセトアミノフェン、咳を鎮めるテーキスト口ファン臭化水酸塩水和物のほか、鼻閉を改善するフェニレフリンや痰を出やすくするグアヤコールスルホン酸カリウムなどが配合されています。したがって、解熱、鎮咳などには効果を示しますが、鼻水が主症状の場合にはあまり適応にはなりません。