当院では、原則的には、抗インフルエンザ薬は希望するお薬を処方しています。
内服薬はタミフルとゾフルーザ錠、吸入薬はリレンザまたはイナビルの中から選択できます。ラピアクタ点滴薬は入院を要する重症患者さんや高熱で体調が非常に悪く服薬が難しい方向けと考えています。ゾフルーザ錠は錠剤が服用できる方が対象になります。
まだ発売予定が決まっていませんが、ゾフルーザ顆粒20%分包は体重20㎏以上の方から使用できる予定です。
リレンザ | タミフル | ラピアクタ | イナビル | ゾフルーザ | |
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一般名 | ザナミビル | オセルタミビル | ベラミビル | ラニナミビル | バロキサビル |
作用機序 | ノイラミニダーゼ阻害 | Capエンドヌ クレアーゼ阻害 |
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投与経路 | 吸入 | 経口 | 点滴 | 吸入 | 経口 |
用法 用量 |
1日2回 5日間 |
1日2回 5日間 |
1回 | 1回 | 1回 |
タミフル | リレンザ | イナビル | ラピアクタ | ゾフルーザ | |
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内服薬 | 吸入薬 | 吸入薬 | 点滴薬 | 内服薬 | |
0歳~生後2週未満 | × | × | × | × | × |
生後2週~5歳未満 | ◎ | × | △ | ● | △ |
5~15歳未満 | ◎ | ○~◎ | ○~◎ | ● | ◎ |
15歳以上~大人 | ◎ | ◎ | ◎ | ● | ◎ |
予防投与 | ○ | ○ | ○ | × | × |
◎推奨 ○使用可 △勧めない(吸入や服用の問題) ×使用不可 ●考慮
1.抗インフルエンザ薬は使用しません。
1.タミフルを第一選択と考えます。
体格は良くても5歳未満の子供さんは、吸入薬のリレンザとイナビルは上手に吸入できないため使用しにくいです。
ゾフルーザも錠剤のため5歳未満の子供さんでは誤嚥のリスクがあるため、お勧めしていません。
様々な剤形が使える年齢ですが、「服薬できなかった」という相談もよく寄せられる年齢です。そこで、確実に服薬できる剤形の使用を考慮します。
1.タミフルドライシロップ
吸入剤が吸えない人や錠剤の服用歴がない方は第一選択になります。クラリスのような特有の苦みがあります。
2.吸入剤
リレンザ、イナビル
3.カプセル
タミフルカプセル(体重37.5Kg以上の人)
4.錠剤
ゾフルーザ錠(確実に錠剤を服用できる方)
5.(顆粒:未発売)
ゾフルーザ顆粒:未発売(体重20Kg以上の人)
6.点滴
ラピアクタ(重症者や高熱で体調が非常に悪く服薬が難しい人)
タミフルカプセル、リレンザ吸入薬、イナビル吸入薬、ゾフルーザ錠の使用を考慮します。ジェネリック医薬品をご希望の方はタミフルカプセルのジェネリックを選べます。
1.タミフルカプセル
2.吸入剤(リレンザ、イナビル)
3.錠剤
ゾフルーザ錠(確実に錠剤を服用できる方)
4.点滴
ラピアクタ(重症者や高熱で体調が非常に悪く服薬が難しい人)
インフルエンザに罹った全ての患者様に投与する薬ではありません
タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタ点滴薬、ゾフルーザ錠などの抗インフルエンザ薬は、患者さんの年齢や状態を見極めて使用することになっています。抗インフルエンザ薬の効能書きにも「抗ウイルス薬の投与がインフルエンザ感染症の全ての患者に対して必須ではないことを踏まえ、患者の状態を十分観察した上で、使用の必要性を慎重に検討すること。」と明記されています。
世界初の抗インフルエンザ薬です。
A型インフルエンザおよびB型インフルエンザに有効。
粉薬とカプセルがあり、生後2週目のお子さんから使用できます。
平成30年8月21日から、どの年齢でもタミフルを使用できるようになりました。以前は10歳台の方には原則として処方しないことになっていました。
タミフルの歴史:
発売当初は製薬会社でも在庫切れになるくらい需要がありました。ところが、2006/2007シーズンに見られた異常行動の報道や、厚生労働省の緊急安全情報発出などにより、使用上の注意が厳しくなり、発売の翌年は患者さんからも敬遠されるきらいがありました。2009/2010シーズンは、新型インフルエンザを中心に、多くの方がインフルエンザに罹りタミフルの流通が悪化しました。特に小児用のドライシロップの国内在庫が逼迫したため、タミフルカプセルの中身をばらして小児に投与することが厚生労働省から認められました。そして、2018年8月、発売から10余年経過し「異常行動との因果関係があるとは言えない」判断され、全年齢で使用できるようになりました。また、2018年9月にジェネリック医薬品が発売されました。
5歳以上のお子さんに処方致します。
リレンザは吸入する抗インフルエンザ薬です。この薬は自宅でパウダー状の薬を自分で口から吸入する薬です。5歳以上のお子さんで、上手に吸入できる方に使用します。
A型インフルエンザ、B型インフルエンザ両方に効果があります。
1回の吸入で治療が終了します。
イナビルはリレンザと同様、吸入する抗インフルエンザ薬です。
A型インフルエンザ、B型インフルエンザ両方に効果があります。
10歳未満のお子さんは1容器20mg(2吸入で治療終了)
10歳以上のお子さんは2容器40mg(4吸入で治療終了)
吸入後に少し苦みを感じます。
苦みのため吸入後に嘔吐する方がまれにあります。
点滴で全身に投与する抗インフルエンザ薬です。
当院では、重い基礎疾患を持つ方や、重症化しやすく入院のリスクが高い患者さんや、高熱で体調が非常に悪く服薬・吸入が極めて困難な方に使用しています。
A型インフルエンザ、B型インフルエンザ両方に効果があります。
ゾフルーザ錠は日本で開発され、世界に先駆けて平成30年3月に発売された、日本発の抗インフルエンザ薬です。
ウイルスに対する作用が今までの薬剤と異なる、新世代の抗インフルエンザ薬です。
特に、ウイルス排出停止までの時間が短い(人に移す期間が短い)傾向があります。
A型インフルエンザ、B型インフルエンザ両方に効果があります。
一回の服薬でインフルエンザ治療が完結します。
錠剤なので、当院では5歳以上のお子さんで、確実に錠剤を服用できる方に処方する予定です。(一般に、幼児が錠剤を服用した場合は、誤嚥や吐き出し、口腔内残薬に注意が必要です)
ゾフルーザ顆粒2%分包製剤(イチゴ味)が発売予定です(発売予定は未定です)
【ゾフルーザは年齢と体重により投与量が決められています】
年齢 | 体重 | 10mg錠 | 20mg錠 | 顆粒10mg分包 |
---|---|---|---|---|
~12歳未満 | 10kg以上~20kg未満 | 1錠 | × | × |
20kg以上~40kg未満 | × | 1錠 | 2包 | |
40kg以上~ | × | 2錠 | 4包 | |
12歳以上~ | ~80kg未満 | × | 2錠 | 4包 |
80kg以上~ | × | 4錠 | 8包 |
これまで使われてきたタミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタなどの治療薬は、「ノイラミニダーゼ阻害剤」という種類で、細胞内で増えたウイルスが細胞から外に出るプロセスをはばむことで、周りの細胞に感染が広がっていくのを防ぎます。
一方、ゾフルーザは、「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤」と呼ばれる種類の薬で、細胞内でのウイルスそのものが増えないようにする働きがあります。
ゾフルーザ(赤色枠)の作用は、細胞に入ったウイルスが中で増えるプロセスを抑えます。一方、タミフルやイナビルなどの従来薬(外側の灰色枠)は外に出て行ったウイルスの広がりを抑える薬です。
ゾフルーザ錠と従来の抗インフルエンザ薬に効果の違いはある?
2016年から2017年にかけ、12~64歳のインフルエンザ患者約1,440人を対象にした最終段階の臨床試験(第三相試験)で、薬の効果や副作用が検証されました。
①発熱や関節痛、喉の痛みといったインフルエンザの症状が出ている期間
②ウイルスが体から消えるまでの期間
―――などを、ゾフルーザを飲んだグループ、プラセボ(偽薬)のグループ、もしくはタミフルを飲んだグループとで比較されました。
①の「症状が出ている期間」(中央値)はゾフルーザが53.7時間でタミフルと同じ程度の長さでしたが、②のウイルスが消えるまでの時間(同)は、ゾフルーザが24.0時間、タミフルが72.0時間と、ゾフルーザの方が、かなり早い時期に消えました。
有害な副作用については、プラセボと同じ程度の出現率で、タミフルと比べても低いという結果が出ました。
また、動物実験の段階ですが、H5N1やH7N9といった鳥インフルエンザのウイルスや、従来の治療薬に耐性をもったウイルスにも効果があることも分かりました。
ゾフルーザは、ウイルスが早く消えるので、職場や学校、家族内感染が減る可能性が高い!
この結果から言えることは、ゾフルーザを飲んでも症状がなくなるまでの時間はタミフルと比べてそれほど変わらないかもしれませんが、ウイルスが体から早く消えるのはゾフルーザの方がずっと早いので、その分、他人に移してしまうことが減るでしょう。家族内や学校、職場でのウイルスの広がりを抑えられると思います。
インフルエンザ脳症はインフルエンザの合併症の中で最も危険な病態です。残念ながら、抗インフルエンザ薬を発症早期に服用しても脳症の発症を抑えることはできません。更に、厚生労働省の研究班がインフルエンザ脳症について専門的に研究していますが、今のところ脳症を早期に診断する決定的な検査は開発されていません。
いいえ。但し、インフルエンザの時に使わない解熱剤があります。
ボルタレンやポンタールなど、ある種の解熱鎮痛剤はインフルエンザには使用しないで下さい。特に、インフルエンザ脳症に罹った子供さんに、ボルタレンを使用すると死亡率が高くなるとされています。
一方、解熱剤を使わなければインフルエンザ脳症に罹らないという事ではありません。
通常、小児科では「アセトアミノフェン」という解熱鎮痛剤が用いられます。アセトアミノフェンは坐薬・シロップ・細粒・錠剤と剤型が幅広いので、赤ちゃんから大人まで使いやすく、現在までの報告ではインフルエンザ脳症に罹ったお子さんが使用しても死亡率が高くなる事はありませんでした。
更に大切なことは、どのような解熱剤でも安易に使用することは好ましくありません。赤ちゃんに熱があると「何とかして楽にしてあげたい」という気持ちは察するに余りあります。そんな時、すぐに「解熱剤を!」と考えずに、まず、体温調節(室内の気温と着衣の適切化)を行い、水分摂取を促しましょう。
インフルエンザは希に「インフルエンザ脳症」という、極めて重い合併症を発症することがあります。ところが、インフルエンザ脳症の発症初期は診断が難しいのが現状です。ご心配の場合は速やかに医師の診察を受けて下さい。