ピロリ菌検査
ピロリ菌自費治療&保険治療について
ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は胃粘膜に生息する細菌で、胃・十二指腸潰瘍、慢性胃炎、胃がんなどを引き起こすとされています。
特に、胃がんはピロリ菌感染と深く関わっています。ピロリ菌感染がない人は胃がんになることが少なく、ピロリ菌に感染すると慢性胃炎から萎縮性胃炎になり、さらに腸上皮化生という変化が起こってくると胃がんになる危険性が高くなってくることが知られています。ピロリ除菌により胃がんの予防や感染の防止が期待されるため、ピロリ菌に感染している場合、除菌治療が推奨されています。
ピロリ菌の除菌療法は2000年より保険適用となりましたが、内視鏡検査または胃・十二指腸エックス線造影撮影により胃潰瘍または十二指腸潰瘍の診断が確定していることが保険適用の条件となっていました。
しかし、2013年2月から、胃潰瘍、十二指腸潰瘍のみならず、ピロリ感染胃炎にまでピロリ菌治療の保険適用が拡大されました。
但し、胃内視鏡検査(胃カメラ)の検査で、ピロリ感染胃炎と診断された場合に限ります。そのため、胃カメラ検査なしでは、保険でのピロリ菌の検査・治療はできません。
しかしながら、胃カメラ検査は絶対やりたくないが、ピロリ菌の検査や治療を受けたいという多くの御要望があります。そこで、当院では保険適用とはならないピロリ菌感染者を対象に自費診療によるピロリ菌検査・除菌を始めることとしました。
自費診療対象となる方(胃カメラ検査を希望されない方)
- ピロリ菌に感染しているかどうか調べたい方
- 胃がん予防のためピロリ菌の除菌治療を希望される方
- 他の医療機関や人間ドックでピロリ除菌を勧められた方
保険診療対象となる方
- 内視鏡検査または胃・十二指腸エックス線造影検査において、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の確定診断がなされた方
- 胃MALTリンパ腫
- 特発性血小板減少性紫斑病
- 早期胃癌に対する内視鏡治療後の方
- 胃内視鏡検査において慢性胃炎と診断された方
診療料金
保険が適応できない場合は自費診療となりますので、全額自己負担です。自費診療の診療料金は以下のとおりです(税込み)
ピロリ菌の感染診断のみ
(当日結果をお知らせします) |
5,000円 |
ピロリ菌の感染診断+除菌治療
(除菌治療に必要な薬代込みです) |
14,000円 |
ピロリ菌の感染診断+除菌治療+除菌判定
(除菌治療に必要な薬代込みです)
(除菌判定は、息をとる検査で施行します) |
21,000円 |
いずれも胃カメラ検査を必要としません。
なお、除菌終了まで2~3回通院していただくことになります。ご了承ください。
ピロリ菌について&ピロリ菌の診断、および除菌治療について
現在、日本人の2人に1人はヘリコバクター・ピロリ Helicobacter pylori(ピロリ菌)に感染していると報告されています。
ピロリ菌の感染は、胃粘膜の慢性炎症を背景として、萎縮性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がん、胃MALT、リンパ腫、胃過形成性ポリープなどの様々な上部消化管疾患の併発を引き起こすとされています。
近年、ピロリ菌の除菌治療を行うと、胃潰瘍・十二指腸潰瘍だけではなく、胃がんの発生も予防できることがはっきりしてきました。
最新の研究では、ピロリ菌は、直接、胃上皮細胞のDNA2重らせんを切断する遺伝子異常を起こすために胃がんを発生しやすくすること、ピロリ菌除菌治療を行わないで、胃酸を抑える普通の治療だけではその遺伝子異常を抑えることができず、胃がんの発生を予防することはできないことが示されています。
そのため、普通の胃薬の治療ではなく、ピロリ菌を早期に除菌治療することで、高確率に胃がんの発生を抑えることができるのです。
早期に除菌治療をすればするほど、その確率は高いと言われています。
1.ピロリ菌は胃の中に生息している細菌です
ピロリ菌はらせんの形態をした微好気性のグラム陰性桿菌で、胃の粘膜に生息しています。
胃は強酸であるため、細菌は生息できないと考えられていましたが、1982年にオーストラリアのWarrenとMarshallが、ピロリ菌が胃の中で生息していることを報告しました。
ピロリ菌はウレアーゼという酵素によりアンモニアを作ることで胃酸を中和して、胃内で生息しています。アンモニアは同時に、消化管粘膜障害の惹起とも関連しています。
2.年齢が高くなるほど感染率が高くなります。
ピロリ菌の感染経路ははっきりとわかっていませんが、経口感染が大部分であると考えられています。
1992年に日本で行われた調査によると、若い人のピロリ菌感染は比較的少ないが、40歳代以上では約80%の人がピロリ菌に感染していました。
これは上下水道の普及率が低かった時期(昭和30年以前)に生まれた世代と、それ以降の世代の差と考えられています。
ピロリ菌は主に胃酸分泌が少なく免疫力の弱い幼児~小児期に成立しやすいと考えられていますが、予防方法はよくわかっていません。
ただ、小児期の衛生環境が感染に影響すると考えられ、実際にわが国では衛生環境の整備とともにピロリ菌の感染率は著しく低下しているため、今後より減少すると予想されています。
3.ピロリ菌の産生物質が胃粘膜を傷害します。
ピロリ菌が感染すると胃に炎症を起こすことが確認されています。
a.胃・十二指腸潰瘍との関連
胃・十二指腸潰瘍の患者様でピロリ菌を検査すると、約90%の患者様がピロリ菌に感染していて、
ピロリ菌が胃・十二指腸潰瘍の原因になっていることがわかっています。
ピロリ菌がいる場合には潰瘍の治療をしても1年後には60%以上の患者様が再発してしまいます。
ピロリ菌を除菌することによって胃・十二指腸潰瘍の再発率は著しく低下することがわかっています。
b.胃がんとの関連
ピロリ菌に感染している人と感染していない人に対して10年間調査を行ったところ、
感染している人では2.9%に胃がんが発生したのに対し、感染していない人では胃がんは発生しなかったという研究報告があります。
また、早期胃がんの治療後にピロリ菌除菌をした場合と除菌治療をしなかった場合で比べたところ、除菌治療をした患者様では新しい胃がんの発生がおよそ1/3に減少したとの報告があります。
4.ピロリ菌の感染診断について
①内視鏡検査を伴うピロリ菌検査方法(胃粘膜の組織を採取します)
a)培養法 |
ピロリ菌を培養します。 |
b)迅速ウレアーゼ法 |
ピロリ菌がもつウレアーゼの働きで作られるアンモニアの有無を調べます。 |
c)組織鏡検法 |
顕微鏡でピロリ菌がいるかどうかを調べます。 |
②内視鏡検査を伴わない検査方法
a)尿素呼気試験 |
呼気を採取して調べる方法です。
ピロリ菌がもつウレアーゼのはたらきで作られる二酸化炭素(CO2)の量を調べます。 |
b)抗体測定法 |
尿や血液のピロリ菌に対する抗体の有無を調べる方法です。 |
c)抗原測定法 |
糞便中のピロリ菌に対する抗原の有無を調べる方法です。 |
いずれの方法も偽陰性(誤って陽性を陰性と判定してしまうこと)となる確率は約5%あるので注意が必要です。
5.ピロリ菌の除菌について
当院では、ピロリ菌の一次除菌、二次除菌、三次除菌と幅広い除菌治療を行っています。
①一次除菌治療(保険治療)
保険治療で行えます。
2種類の抗生物質と胃酸を抑えるおくすりの3種類のおくすりを朝と夕方の1日2回1週間続けてのむことで約80~90%の患者様はピロリ菌を除菌できます。
除菌が成功したかどうかは除菌治療終了後4週間以上あけて検査をすることでわかります。
当院では便中ピロリ菌抗原か、尿素呼気試験により除菌判定をおこないます。
②二次除菌治療(保険治療)
保険治療で行えます。
1回目の除菌治療で除菌が出来なかった場合には、薬を変えて再度除菌治療をおこなうことが可能です。
2回目の除菌治療では、1回目に失敗した方でも約90%の方で除菌できます。
除菌が成功したかどうかは除菌治療終了後4週間以上あけて検査をすることでわかります。
当院では便中ピロリ菌抗原か、尿素呼気試験により除菌判定をおこないます。
③三次除菌治療(自費治療)
1、2回目の除菌治療で除菌が出来なかった場合には、薬を変えて再度除菌治療をおこなうことが可能です。
しかし、3回目の三次除菌は自費治療になります。
3回目の除菌治療では、2回目に失敗した方でも約90%の方で除菌できます。
除菌が成功したかどうかは除菌治療終了後4週間以上あけて検査をすることでわかります。
当院では便中ピロリ菌抗原か、尿素呼気試験により除菌判定をおこないます。
ピロリ菌の三次除菌治療について
ペニシリンアレルギーの方のピロリ菌除菌治療
6.除菌治療の副作用
除菌治療の主な副作用として以下のものが報告されています。
いずれも除菌治療時の一時的なものであると考えられています。
①下痢・軟便 |
下痢を起こしたり、便がゆるくなったりします。 |
②味覚異常 |
食べ物の味を苦く感じたり、おかしいと感じたりすることがあります。 |
③肝機能の上昇 |
AST(GOT)・ALT(GPT)の変動:肝機能の検査値が上がることがあります。 |
④逆流性食道炎 |
除菌療法が成功した後に、胃酸の分泌が盛んになり、一時的に胃炎や逆流性食道炎(胸やけ)を生じることがあります。 |
7.除菌療法をはじめる前に
- これまでに薬を飲んで体調が悪くなったことのある場合は申し出て下さい。
- ペニシリンアレルギーといわれたことがある場合は申し出て下さい。
- 確実にピロリ菌を除菌するために、薬は必ず指示されたとおりに服用するようにして下さい。
- 自分の判断で勝手に薬を減らしたり、服用を中止してはいけません。
- 過敏症(じんましん・かゆみ・発疹)や便に血が混じるようなことがあれば、おくすりを中止し来院して下さい。
- 二次除菌療法の間は、アルコールの摂取(飲酒)を避けて下さい。
- 稀に(0-2%)に除菌成功後にピロリ菌に再感染することがあります。
- 副作用を認めた場合は、受診して下さい。その際の費用は保険診療となります。