高脂血症は脂質異常症とも呼ばれており、血中のコレステロールや中性脂肪が過多になる病気です。この状態のまま放置しておくと、血管の壁に脂質が蓄積されて、血流が阻害される動脈硬化を発症します。そして、脳梗塞や脳卒中、心筋梗塞などの重大な病気を引き起こします。早めに治療を行えば重大な病気を防げるのですが、自覚症状がほとんど無いため、症状が起きた時には既に病気がかなり進んでいることがあります。日々の食事の習慣や生活習慣から誘発される疾患であることから、生活習慣病の1つと言われています。
乱れた食事の習慣やその他の生活習慣が原因の根本であることがほとんどです。特に食生活の影響が大きく、カロリーの多い食事、脂分(動物性脂肪)の多い食事、野菜不足、糖質の多い食事(間食)などが中性脂肪や悪玉コレステロールを増やし、そして高脂血症を招きます。また運動不足になると筋肉や骨が弱くなり、身体の基礎代謝が低下していきます。そのため、脂質の代謝も悪くなり高脂血症に至ります。その他、日常生活での身体的または精神的なストレスも関連します。ストレスは交感神経を刺激し、血管を収縮させて血圧を上げます。同時にコレステロール濃度や血糖値が高まることが分かっています。また、ストレスが暴飲暴食や生活の乱れを推し進めてしまうことが多く見られます。喫煙についても、ニコチンが血中コレステロールに影響し、そのため高脂血症に至る要因に関わっていることが分かっています。
自覚症状がほとんどありません。したがって、職場等の定期検診で指摘されて認識する人がほとんどです。
一般的な健康診断でも行われる血液検査で調べます。検査項目としては、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪の値があり、各々基準値を越えているかを確認します。特に、LDLコレステロール値は重要視されています。また、それぞれのコレステロールの高低に応じて、「高コレステロール血症」、「高LDLコレステロール血症」、「低コレステロール血症」、「高中性脂肪血症」と細分化されています。
血液検査でチェックする各コレステロールの値で診断します。特に心血管系疾患と関連の深いLDLコレステロールの値を中心に診断していきます。
総コレステロール | 異常値=220mg/dL以上 (ただし近年ではLDLの方が重要視される) |
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LDLコレステロール | 異常値=140mg/dL以上 |
HDLコレステロール | 異常値=40mg/dL未満 |
中性脂肪 | 異常値=150mg/dL以上 |
最も多く見られるのが、動脈硬化です。さらに動脈硬化から以下のような様々な臓器の疾患へと移行していきます。
心臓 | 心筋梗塞、狭心症 |
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血管 | 大動脈瘤、大動脈瘤破裂、閉塞性動脈硬化症 |
脳 | 脳梗塞、脳卒中 |
腎臓 | 腎不全、腎硬化症 |
食事の習慣を中心に改善していき、併せて運動療法を行ないます。また薬物療法でコレステロールのコントロールをします。なお、治療の目的は血中脂質を下げることに加え、動脈硬化の進行を阻止することも含まれます。したがって、動脈硬化に関連する原因の排除も治療の中に含まれます。
主に以下の観点から食事の習慣を改善していきます。
過食を控える | 一日に必要なカロリーを念頭に置き、そのカロリーを越えない程度の食事にします。 |
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動物性脂肪の多い食事を控える | 飽和脂肪酸が多いためLDLコレステロールを増加せせます。代表的な食品は、肉の脂身や霜降り肉、バター、チーズ、アイスクリーム等があります。 |
コレステロールの多い食事を控える | コレストロール含有量が多い食品には、レバーや砂肝、バター、ラード、いくら等があります。卵に関しては種類によって諸説がありますので、主治医もしくは栄養士などの専門家の指示に従います。 |
過剰なアルコール摂取や間食を控える | アルコールや間食は中性脂肪を増加させるので控えめにします。 |
食物繊維の多い食事を摂る | 食物繊維は消化器へのコレストロールの吸収を抑える力を持っています。海草、キノコ類、野菜などに豊富に含まれています。 |
ビタミンを多く摂る | ビタミンにはコレステロールの酸化を防止します。コレストロールが酸化すれば動脈硬化を悪化させるため、ビタミンは積極的に摂ることが良いとされています。 |
ウォーキングやランニング、水泳などの有酸素運動を習慣づけます。肥満解消にもなり、血行促進が期待できます。またLDLコレステロールの減少とHDLコレステロールの増加に良い影響を与えることが分かっています。
高脂血症の治療は、基本的に食事療法と運動療法になりますが、効果がそれほど出ない場合は薬物療法を組み合わせて行ないます。主にLDLコレステロールを下げる薬や、トリグリセライド(中性脂肪)を下げる薬があり、患者さんそれぞれに適した薬を処方します。薬を2~3か月服用しても、脂質管理目標値まで下がらない場合には、薬の変更や増量が検討され、数種類の薬を併用して服用することもあります。
肝臓でLDLコレステロールが作られるときに必要となる酵素(HMG-CoA)の働きを抑え、過剰にコレステロールが作られないようにする薬です。その結果、肝臓が血液中のLDLコレステロールを多く取り込むようになり、血液中のLDLコレステロール値が低くなります。高脂血症(脂質異常症)の治療薬の中で、LDLコレステロール値を特に下げる薬として使われています。トリグリセライド(中性脂肪)値を下げる働きもあります。
腸で胆汁酸を吸着して、腸から再び吸収されるのを抑える薬です。その結果、血液中のLDLコレステロールが効率よく代謝されるようになり、LDLコレステロール値を下げます。食事中に含まれるコレステロールの吸収を抑える作用もあります。HMG-CoA還元酵素阻害薬と一緒に使われたり、腎臓の機能が低下している場合などに使われます。
小腸からコレステロールが吸収されるのを妨げることによってLDLコレステロール値を下げます。HMG-CoA還元酵素阻害薬と一緒に使うことで、更なるLDLコレステロール値の低下が期待できます。」
コレステロールを胆汁中に排出させたり、LDLコレステロールの酸化を抑え動脈効果を予防する働きがあります。
主に、肝臓でトリグリセライド(中性脂肪)が作られるのを抑えたり、トリグリセライドの分解を促進する薬です。LDLコレステロール値を下げたり、HDLコレステロール値を上げる作用もあります。
ビタミンの一種で、肝臓でトリグリセライド(中性脂肪)が作られるのを抑えます。また、HDLコレステロール値上昇も見込めます。
青魚に含まれる成分(不飽和脂肪酸)から作られた薬で、トリグリセライド(中性脂肪)値を下げる働きがあります。また、血液の流れを良くする作用もあります。
高脂血症の程度が生活習慣に根ざしていることから、合併症に至る前に治療が終われば、改善された生活習慣を続けることで良好になります。ただし、遺伝的に脂質異常になりやすいケースもあるため注意は必要です。
自覚症状がなく病気の状態が分かりにくいため、定期的に血液検査を受けて血中コレステロールや中性脂肪の値を把握しておくことが大切です。また、症状を感じないからといって薬の服用を個人判断でやめることは避け、医師の指示通りに服用を続ける必要があります。